研究課題/領域番号 |
22K15551
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠原 佑記 東北大学, 大学病院, 助教 (50886562)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / 液性免疫 / Fc受容体 / メタボローム / サイトカイン / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
がん患者では血液中に腫瘍に対する抗体(抗腫瘍抗体)が認められることが知られているが、抗体が腫瘍免疫において果たす役割についてはこれまで明らかとなっていなかった。我々はノックアウトマウスを用いた研究により抗腫瘍抗体が抑制性のFcγ受容体を介して腫瘍微小環境に存在する免疫細胞の数や性質、産生するサイトカインなどを変化させ、抗腫瘍免疫を抑制する環境を形成していることを明らかにした。この抑制性のFcγ受容体はヒトにも共通し発現している分子であり、ヒトにおいても抗腫瘍抗体が腫瘍免疫を抑制している可能性が考えられた。 我々ははマウスモデルで認められた液性免疫による腫瘍微小環境への影響をがん患者検体を用いて検証すること目的として、東北大学病院個別化医療センターバイオバンク部門に収集されている癌患者の血清を用いて研究を行っている。 血中抗体価、サイトカイン量、代謝産物量などの測定を随時おこなっており、現在までに食道癌、胃癌、頭頸部癌、大腸癌の約80検体でサイトカインアレイによる解析を行った。また、今年度は食道癌の40検体、頭頸部癌の42検体でELISA法による抗p53抗体価測定を実施、食道癌の91検体、頭頸部癌の88検体でメタボローム解析を実施した。 同時に電子カルテより当該症例の生存期間、腫瘍縮小効果、奏効期間、有害事象、採血結果等の臨床経過を抽出し、患者選択や予後、治療効果を予測するバイオマーカー探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者検体の抗体価測定、サイトカイン測定に加え、メタボローム解析も実施できている。 また、頭頸部癌患者に関しては臨床データの抽出を完了し、採血データより治療効果と関連する可能性のある因子について解析を行い、現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
残りの検体についての出庫は完了しており、測定キットが納品され次第、抗体価測定を行う。 また食道癌患者の臨床データについても収集を行い、頭頸部癌、食道癌それぞれにおいて予後や治療成績に影響を与える因子を網羅的に探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
p53抗体価測定キットの入手に時間がかかっており、次年度に納品となったため次年度使用額が生じた。キットが納品され次第、順次測定を行う予定である。 また、抽出した臨床データより得られた知見について学会発表や論文投稿も予定している。
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