研究課題
臨床的な評価として、膵癌切除患者の治療介入前の口腔機能を評価した臨床データと化学療法、転移形成、予後の比較を行ったが、口腔内環境の条件と、化学療法の効果や予後に有意差は得られなかった。続いて、ヒト膵癌組織を用いて細菌の構成成分であるLPSを抗LPS抗体による免疫組織化学染色検査で評価したところ、膵癌の約60%で腫瘍内細菌の存在を確認した。正常膵組織にはLPSは検出されなかった。蛍光標識した細菌が膵癌細胞株に取り込まれることをTime-Lapse imagingでリアルタイム撮影することに成功した。また、膵癌自然発生マウス由来の膵癌細胞株をマウスに同所移植し、腸内細菌叢の変化についてNGSによるメタゲノム解析を行なった。膵同所移植群では、プロバイオティクスとして注目されている"Akkermansia"の糞便内での減少を認めた。"Akkermansia"は膵癌抑制性に働くMicrobiomeの候補と考えられる。さらに、歯周病菌(Fusobacterium nucleatum)により、膵癌細胞の遊走能の亢進を認め、歯周病菌の刺激により癌細胞における免疫抑制性に働く免疫細胞を誘導するケモカイン産生が促進されていることを同定した。また、膵癌細胞株を皮下移植したマウスの腫瘍内に歯周病菌を投与すると、腫瘍の増大を認めた。本研究により、膵腫瘍内に細菌叢が存在すること、特定の細菌が膵癌の悪性度を高めていることがわかった。
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Cancer Science
巻: 114 ページ: 3666~3678
10.1111/cas.15901