研究課題
キメラ抗原受容体(CAR: Chimeric antigen receptor)導入T細胞療法(CAR-T療法)の登場により、がん治療の成績は向上してきたが、がん免疫療法の有効性は未だ限定的であり、主な原因の一つとして腫瘍微小環境中の免疫抑制シグナルが挙げられる。本研究では、TGF-βなどのサイトカインに着目した。TGF-β受容体の細胞外ドメインと、IL-7やIL-21といったT細胞機能を高めるサイトカイン受容体の細胞内ドメインを連結させた新規の人工受容体を設計し、CAR-T細胞に搭載することで、TGF-βのシグナルをIL-7、IL-21のシグナルに変換させることが可能となった。一方、CAR-T細胞療法の副作用としてサイトカイン放出症候群(CRS: cytokine release syndrome)が重要である。主にIL-6が原因と考えられ、IL-6抗体がCRSの治療に用いられる。我々は、CRSを予防する機能をCAR-T細胞に搭載するため、IL-6の受容体であるIL-6R、gp130の細胞外ドメインを繋げ、これにIL-7受容体の活性化変異体の細胞内ドメインを連結させた。これによってCAR-T細胞が浸潤した腫瘍局所において効率的にIL-6を捕捉し、かつIL-7シグナルによってT細胞の増殖能を長期間維持することが出来、in vitro、in vivo両方において、この新規受容体を搭載したCAR-T細胞による治療効果の向上を示した。
すべて 2024
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell Reports Medicine
巻: 5 ページ: 101526
10.1016/j.xcrm.2024.101526