近年、免疫チェックポイント阻害薬(以下ICI)などの新規がん免疫療法が利用されている。しかし、がん免疫療法が有効な患者ははっきりしておらず、世界中の研究者がICIの有効性の予測因子を探索している。また治療当初はICIが有効であっても、治療を継続していくにつれ、効果が低下する獲得耐性が問題となっている。一方で、多くのがん種は従来ヘテロ性が高いと言われており、近年多領域シーケンスを用いることで、腫瘍内には様々なサブクローンが存在することで強いヘテロ性をもつことや、そのヘテロ性が殺細胞性抗がん剤との関連性を示す報告があり、多領域シーケンスと薬物療法の奏効性の関連解析が注目されつつある。しかし、過去にがん免疫療法の治療効果の予測を目的とし、治療前後の多領域シーケンスを行った報告はない。これらの背景に対し本研究では、下記を明らかにすることを目的とした。 1.腫瘍組織はがん免疫療法の治療前後でどのように進化するのか 2.なぜ同一患者内の別臓器で治療効果が異なるのか。また、治療効果が違う転移臓器には、どのような病理学的・遺伝学的な違いがあるのか 3.ICIの獲得耐性はどのように形成され、腫瘍のどのような特徴と関連があるのか 当該年度は、下記の研究成果を得た。具体的には、昨年度分かったことに加えて、なぜ悪性クローンとなり得るのか、その構成する変異から突き詰めた。変異の病原性、発現データとの関連性、サブクローンの成長過程の推測を行い、選択圧がどのようにかかったのか、を推測した。 現在論文を投稿している。
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