研究課題/領域番号 |
22K15578
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 晴祥 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80793504)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 膵癌 / FUT3 / FUT2 / 遺伝子型 / 層別化解析 / 予後予測モデル |
研究実績の概要 |
膵癌は、ほとんどが進行した状態で診断され、制御が非常に困難な固形がんの一つである。分子標的治療および免疫治療を含む新規薬剤の開発は遅れをとっているものの、FOLFIRINOXやジェムシタビンプラスナブ-パクリタキセルなどの多剤療法、放射線療法、手術療法を含む集学的治療の開発は、この10年間で確実にその生命予後を延長している。進行膵癌ではその大半で術前治療の有効性が示され、術前治療中の手術適応の適切な判断をすることの重要性が増している。従来の画像診断による治療効果判定は過小評価される可能性があり、現在のところ、腫瘍マーカーの正常化をはじめとした生物学的マーカーが良い指標となる可能性が広く認識されている。 現在、膵癌で汎用されているCA19-9およびDUPAN-2の発現量は、FUT2およびFUT3の機能に依存することが分かっており、より正確な腫瘍マーカー正常化判定法の開発が急務となっている。本研究では、術前治療後の手術的膵臓がん患者の腫瘍マーカー正常化の最適なカットオフ値は、FUT2/3の遺伝子型特異的に決定されると仮定し、遺伝子型特異的な腫瘍マーカーの正常化の判定が、術前治療後のCA19-9およびDUPAN-2の有用性を高めることができるかを検討した。 本研究は名古屋大学・富山大学・名古屋医療センターの多施設共同研究として行われた。2012年から2022年の間に術前治療後に外科的切除を行った膵癌症例345例のゲノムDNAを対象にTaqMan PCRを施行し、341例のFUT2/3の遺伝子型の決定に成功し、これを基に腫瘍マーカー遺伝子型モデル(TMGモデル)を構築した。従来の単一カットオフモデルでのマーカー高値のハザード比は1.61(P = 0.12)であったのに対して、TMGモデルの予後層別能はTMG高値のハザード比は 4.47(P<0.01)と格段に改善した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果および解析はおおむね終了し、現在この結果をまとめ、科学英文雑誌に投稿中である。今後は論文の修正および追加実験、投稿費用などが見込まれており、この内容によって研究終了時期が変更となる可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、論文の修正および追加実験、英文科学雑誌に投稿を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね研究自体は終了したが、論文修正、低頻度のFUT2およびFUT3遺伝子変異同定のための次世代シーケンサーを用いたDNAシークエンスなどの追加実験、および英文雑誌への投稿が来年度以降となったため次年度使用額が生じた。次年度の追加実験、英文科学雑誌の投稿に使用する。
|