胃癌は世界で減少傾向であるものの本邦における罹患率・死亡数は依然として高く、胃癌の治療抵抗性の克服は解決すべき課題である。本研究ではPET陽性胃癌と癌細胞のサブタイプに着目し、免疫抑制細胞の機能、局在、そして代謝の変動を評価する。これにより、癌細胞サブタイプ毎の腫瘍免疫微小環境と癌細胞免疫逃避機構のメカニズムを明らかにすることを目的とした。低分化型胃癌の次世代プロテオミクス解析 (iMPAQT法)では低分化型以外の胃癌と比較してLDHAの発現が有意に高かった。さらに、胃管状腺癌、低分化型充実型胃癌、低分化型非充実型胃癌、胃印環細胞癌のシングル遺伝子発現解析を行った。その結果、PET陰性になる頻度が比較的高い印環細胞癌ではグルコーストランスポーター関連遺伝子(GLUT-1-4)の発現が高値であり、TCA回路関連遺伝子・核酸合成経路関連遺伝子・脂肪酸関連遺伝子の発現が高値であることが判明した。一方、低分化型充実型胃癌ではグルタミン酸トランスポーター(ASCT2)の発現がそれ以外の胃癌と比較して高値であった。以上から分化度によって使用するエネルギー源や代謝環境が異なる可能性が示唆された。今後は術前PETとの相関を評価し、分化度とPET判定による新たな個別化治療を目指す。
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