研究課題/領域番号 |
22K15590
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
星 和明 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (90882407)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血中循環腫瘍細胞 / リキッドバイオプシー / 機械学習 |
研究実績の概要 |
肺がんは未だに世界中で死亡要因第一位を占め、肺がん全体の5年生存率は20~30%と低い。しかしながら、ステージ1早期発見では5年生存率が約70%にまで回復するため、より低侵襲で信頼性の高い診断技術の開発が重要である。リキッドバイオプシーは身体への負担が少ない低侵襲性の液性検体(血液や尿など)を利用した診断に有用な技術であり、近年、機械学習を併用したバイオマーカー研究が報告されている。機械学習は人工知能(AI)開発の基盤技術であり、機械に大量のデータからパターンやルールを発見させ、それをさまざまな物事に利用することで判別や予測をする技術である。リキッドバイオプシーから得た情報を機械学習で処理することにより、早期発見や治療奏効予測に重要なバイオマーカーの発見が期待される。本研究では肺がん患者検体中の樹状細胞の表面抗原やポピュレーション変化に着目し、機械学習を用いて早期発見の指標となる複合的バイオマーカーを創出することを目的とする。樹状細胞は患者血液検体に含まれており、強力な抗原提示能を有する。自然免疫と適応免疫を仲介し、がん疾患でも重要な役割を担う。2022年度は、まず血液検体から樹状細胞(DCs)を回収できる濃縮実験系と、フローサイトメトリー解析実験系の構築を目指した。その結果、検体中から樹状細胞を濃縮し、その発現割合を調べる実験系を構築した。また、マーカーとなり得る抗原予測に向けた予備的な機械学習も実施し、利用な可能なアルゴリズムを複数検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大による影響に伴い、研究協力者(被験者)となる肺がん症例およびコントロール比較となる症例の入院、外来患者が減少し、予備検討の一部が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
健常人血液検体を用いて、pDCsの濃縮条件並びにゲーティング解析を実施し、評価に必要な基礎実験系を確立した。今後は、肺がんおよび非がん検体を用いて、臨床検体中のpDCsおよび標的抗原の発現について解析を進める。濃縮後画分を免疫賦活分子で刺激し、健常人とがん患者における免疫応答性の違い(応答する免疫細胞ポピュレーション変化)も調べる。また、複合的マーカーとなり得る候補因子を抽出するため、オープンデータベースを活用した機械学習やバイオインフォマティクス解析を予定している。オープンデータベースから得た情報からバイオマーカーとなり得る可能性の高い標的分子を探索する。 また、得られる血液検体量が予定よりも少なく、当初予定していた血中循環腫瘍細胞(CTCs)総数変化との相関解析の実施が難しい。そこで、今後は、解析の焦点を樹状細胞にあて、肺がん検体、非がん検体を用いた解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による影響に伴い、研究協力者(被験者)となる肺がん症例およびコントロール比較となる症例の入院、外来患者が減少し、予備検討の一部が遅れている。次年度使用額については、2023年度分と併せ、抗体や試薬購入、機械学習用有料パッケージ、論文投稿用、学会発表の費用として使用する予定である。
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