唾液腺腫瘍は画一的な診断や治療がない。悪性唾液腺腫瘍において最も発現頻度の高い粘表皮癌はタンパク質の一種であるムチンを産生するという特徴があり、そのムチンは多数の糖がつながった糖鎖に修飾されていることが知られている。私たちはこれまで粘表皮癌のムチンをターゲットにムチンおよびムチンを修飾する糖鎖の解析を行ってきた。その結果、粘表皮癌に含まれるムチンにおいて、ムチンの一種であるMUC1が特徴的な糖鎖を持つことを明らかにした。しかし、唾液腺悪性腫瘍は年間発生数が人口10 万人あたり2.5~3.0人と稀な疾患である。そのため、十分な症例・検体を収集することは困難を極めた。そのため、ホルマリン固定パラフィン包埋検体をもちいた、ヒドロキシルアミンによるムチン抽出法の開発をおこなった。 糖鎖解析にて凍結組織検体とヒドロキシルアミン処理を行ったホルマリン固定パラフィン包埋検体のムチンの糖鎖を比較した結果、同様の糖鎖を認めた。 本研究により、ホルマリン固定パラフィン包埋検体からヒドロキシるを用いてのムチン抽出は可能であり、抽出したムチンの糖鎖も凍結組織検体と同様であることから、ホルマリン固定パラフィン包埋検体を用いてのムチン抽出、糖鎖解析の可能性が示唆された。 今後は最適なヒドロキシるアミン処理の条件の検索、糖鎖への影響を検討しすることで、解析のための検体の増加が可能であると考えられ、ムチン分析の発展に寄与すると考えられる。
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