研究実績の概要 |
骨髄不全症は、T細胞集団のごく一部の変化が原因と思われるが、細胞集団を対象とした網羅的解析では原因分子の特定に至っていない。また、CAR-T療法後にも二次性の骨髄不全症が認められ、原因分子やその検査法は臨床的なアンメットニーズである。本年度は、CAR-T療法を施行後の血球減少から解析に着手した。同意を得た患者から経時的に採取した末梢血検体からPBMCおよび血清を採取当日に分離し解析に供した。解析に先立ち、試験系の陽性対象細胞としてCD19CAR陽性の株化細胞(CD19CAR-Jurkat細胞)を用いた。CD19CAR-Jurkat細胞は、当研究室で樹立された。各細胞分画の細胞表面および細胞内タンパクをCAR-T細胞とともに解析する目的で、CAR-T細胞の検出系を確立した。マルチカラーフローサイトメトリーではCD3/CD4/CD45RA/CD278(PD-1)/FMC63/CD196(CCR6)/CD127/CD25を同時検出し、Th1, Th2, Tm, Tn, Treg, Th17, PD-1陽性T細胞, CAR-T細胞を解析した。またCD8, CD196, KLRG1, CD56, IL-17, CD4を同時検出した。さらに、血清検体を用いてタンパクArrayを行い、ImageJ(NIH)を用いて画像解析した。2020年~2022年まで当院血液内科でCAR-T療法を施行された患者26名を対象とした後方視的解析では、1ヶ月または3ヶ月遷延する血球減少は、解析可能な者のうち各々85%および92.3%に認めた。遷延する血球減少の内訳はNeu減少61.5%、Hb減少84.6%、PLT減少53.8% であった。血球減少症例では末梢血中CAR-T細胞のexpansion以降にCD45RA-/CD196+細胞、CD159a+/CD56+細胞の比率および絶対数の上昇を認めた。
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