研究課題/領域番号 |
22K15600
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
村岡 優 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20596887)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | リキッドバイオプシー / cell free DNA |
研究実績の概要 |
肝細胞癌診療におけるリキッドバイオプシーにおいて、簡便に高精度な検査が望ましい。本施設では腫瘍由来のcell free DNA (cfDNA)をデジタルPCR (dPCR)で解析する手法を確立した。早期肝細胞癌から古典的肝細胞癌まで高頻度にみられるTERT promoter C228T変異をdPCRで検出し、定量的評価に応用した。本施設のこれまでの報告より、TERT promoter変異陽性cfDNA (以下mutant cfDNA)量は腫瘍量を反映し、特に治療後のmutant cfDNAの変化は短期間の腫瘍壊死量を反映していた。アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法後のmutant cfDNA量を解析したところ、治療後短期間のmutant cfDNA増加量は乏しく、既報にあるチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI)治療後のmutant cfDNA量の増加と異なる動態を確認した。また、アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法著効例では2コース目開始時点のmutant cfDNAが消失している症例がみられた。肝細胞癌治療後のmutant cfDNA量の動態は使用する薬剤による相違があると考えられ、治療効果の早期予測へ応用するために臨床検体を用いた検討を継続する必要がある。 肝細胞癌の薬物治療は2022年12月にデュルバルマブ・トレメリムマブ併用療法が認可されたことで、今後免疫チェックポイント阻害剤の使用頻度が増えると考えられる。また、CTNNB1変異の有無と免疫チェックポイント阻害剤の治療効果について注目されている。 既存のデータベースより、肝細胞癌にみられるCTNNB1変異はchr3: 41224606-41224646 (GRCh38)の約40bpの領域に集中していることが分かり、複数の変異を同時に検出するmultiplex digital PCRの検査系の開発に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リキッドバイオプシーの解析対象は肝細胞癌のうち薬物治療を実施している症例が主体である。そのため、症例数に限りがある。また、新規検査体系の確立のためには臨床検体を用いた検討に先行して人工DNAなどを用いた基礎的検討が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き肝細胞癌に対する薬物治療中のTERT promoter変異陽性cfDNA定量解析、CTNNB1変異をターゲットとしたcfDNAの解析を行う。さらに、肝細胞癌治療の臨床情報をもとに治療反応性と治療抵抗性を規定する因子を探索し、リキッドバイオプシーを用いた解析に応用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に実験試薬購入費として使用する。
|