血液中の癌由来因子としてcirculating tumor DNA (ctDNA)に注目し、簡便で低ランニングコストであるデジタルPCR(dPCR)を用いた検討を実施してきた。肝細胞癌(HCC)の遺伝子異常のなかで、最も高頻度に認める変異はTERT promoter変異であり、リキッドバイオプシーのターゲット因子となり得る。 アテゾリズマブ+ベバシズマブ (AB)療法中にみられるTERT promoter変異陽性のcell free DNA (Mutant DNA)量を検討した。同変異陽性21例の検討ではAB療法2コース目以降にMutant DNAが減少するResponderが有意に良好なProgression free survivalと関連していた(P<0.001)。 近年多くの癌で免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が使用され、CTNNB1変異とICIの治療反応性不良との関連が指摘されている。The Cancer Genome Atlas (TCGA)ではHCCにみられるCTNNB1変異は約40塩基の範囲に集中し、代表的な121A>Gと133T>C変異に注目した。人工DNAを用いた検討で両変異のMutant DNAを一度に定量する方法を確立した。 遺伝子変異以外にDNAのメチル化が発癌に注目されている。TCGAより癌特異性の高いメチル化領域としてSEPT9のCpG領域(Chr17:75369657)に注目した。異なる分化度の肝細胞癌組織を用いてSEPT9領域のメチル化頻度を確認したところ、中分化・低分化型の腫瘍においてメチル化が高頻度にみられた。 今回注目したTERT promoter、CTNNB1変異、SEPT9メチル化以外にHCCの発癌、悪性度に関連するターゲット因子が同定されれば複数の因子を検出するマルチプレックスの検査方法を構築できる可能性がある。
|