研究課題/領域番号 |
22K15628
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
井林 賢志 自治医科大学, 医学部, 講師 (90911892)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒト嗅覚 / 頭蓋内脳波 / 嗅覚関連領野 / パーキンソン病 / てんかん |
研究実績の概要 |
ヒト大脳における嗅覚情報処理機構は、未解明な点が多い。嗅覚野ならびに関連領域間の情報伝達を解析するのには、時間分解能の高い頭蓋内脳波信号(iEEG)が有用である。iEEGは、臨床的な目的で侵襲的に頭蓋内に留置された電極を用いて計測され、シグナルノイズ比の高い、時間解像度の高い良質な信号である。 われわれはこれまでに作成したカスタムメイドの刺激呈示装置を用いることで今年度はあらたに3名の頭蓋内電極留置中の患者の嗅覚関連脳活動の計測を行うことができた。対象となった患者は難治性てんかんの焦点検索を目的にロボット支援下定位的深部電極留置術を行った1名と、開頭による硬膜下電極留置術を行った1名、ならびにパーキンソン病に対する治療的な脳深部刺激電極を留置した1名であった。 それぞれの被検者において、上記に述べた匂い刺激装置を用いることで匂い名辞課題中の頭蓋内脳波信号を計測することに成功した。さらに、このうち一名からは、より簡易な嗅覚刺激呈示装置による刺激呈示システムを試し、これまで同様に信号を計測することに成功した。得られた頭蓋内脳波信号に対して、時間周波数解析の手法を用いることで、事象関連活動や領野間の機能的結合を解析することに成功し、ヒト嗅覚情報処理機構の解明を試みた。その結果、嗅覚情報処理を担う嗅内野をはじめ、関連領野の神経活動を検知することに成功した。 本年度は、これまでの研究成果の一部を査読付きの国際学会や国内学会にて発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第二年度に3名の被検者からデータ計測が可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより簡易な刺激装置の適応も同時に進めながら計測症例をさらに積み重ね、確認された神経活動の再現性を確認し、成果をまとめてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の刺激装置に対するメンテナンスやシステム更新を要するほど、本年度は症例が蓄積されなかった。備品の消耗も最小限であったため、今年度の補充が予測を下回った。また、一部参加予定であった海外学会がハイブリッド開催であったため、旅行費等の使用が予測を下回り、次年度使用額が発生した。次年度は装置メンテナンスならびに成果発表(学会参加や論文投稿)のため活用する。
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