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2023 年度 実施状況報告書

掻破行動を司る止痒成功確率に関する法則の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K15630
研究機関順天堂大学

研究代表者

本田 耕太郎  順天堂大学, 大学院医学研究科, 非常勤助教 (70803625)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード痒み / 掻破行動 / 確率 / 統計モデル
研究実績の概要

ひとたび掻破行動が開始されると、行為者の意図しないところで2回、3回とランダムに繰り返しが延長される。このようなランダム性の性質を明らかにするために、掻破行動のランレングスを確率変数として捉えたときに得られる確率分布の特徴を解析した。健常マウスの掻破行動のランレングスの確率分布が0.5のn乗に近接するという特徴を見出したので、初めて成功するまで同じ成功確率で試行を繰り返すときの試行回数が表す幾何分布を用いて掻破行動のランレングスの確率分布を説明できると考えた。本研究課題では掻破行動のランレングスのランダム性を説明する幾何分布のパラメータを止痒成功確率と呼び、急性痒み誘発モデルにおける止痒成功確率の変動を明らかにする。
一般的に痒み・痛み研究で用いられているヒスタミン、クロロキン、beta-alanine、IL-31を起痒物質として、カプサイシンを発痛物質として選択した。これらの濃度依存的な確率分布と止痒成功確率の変化について、それぞれ16匹のC57BL/6マウスを用いて掻破行動のランレングスの確率分布を得て解析した。すべての実験条件において得られた確率分布はランレングスが1の出現確率が最も高く、対称性のある分布ではなかった。投与物質それぞれについて異なる成功確率の下限を見出すことができた。意外なことに、カプサイシンを投与した場合の止痒成功確率の推移は特徴的で、下限のピークに達したのち投与量増加に伴って増加した。
これらの結果は、急性痒み誘発型の掻破行動のランレングスのランダム性は止痒成功確率を用いて説明できる可能性を示唆する。カプサイシンに誘発される掻破行動のランレングスについての解析結果は、痛みも止痒成功確率を変動させる要因となることを示唆する。止痒成功確率の推移が減少から増加に転じる点については、痒みから弱い痛みへの変化を表しているかもしれない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者は起痒物質と発痛物質それぞれに誘発される掻破行動のランレングスの確率分布について、投与濃度依存的にどのように変化するかに着目して解析した。特に幾何分布の特徴である単調減少が壊れていずれかのレングスにピークが移動するような条件が見つかった場合、掻破行動のランダム性を規定するメカニズムが変化したことを示唆すると考えられた。本研究課題で選択した起痒物質ではそのようなランダム性そのものの変化は観察されずに、投与濃度依存的な成功確率の低下を示唆する確率分布の変化が観察された。成功確率の下限に関しては起痒物質の種類によって異なっており、感覚神経に発現する受容体に依存して成功確率の下限が決まると想定された。生理食塩水を投与した群においても成功確率の低下が見られることから、皮膚の膨張等の刺激も成功確率の低下に寄与する可能性がある。意外なことに、発痛物質であるカプサイシンを投与したときに誘発される掻破行動のランレングスもこれまでと同様の確率分布を示したが、成功確率の投与濃度依存的な推移は低下したのちに上昇したため、起痒物質とは異なる挙動を示した。これらの結果から、掻破行動のランレングスのランダム性を幾何分布に決定する機構は頑健であるが、成功確率は皮内または皮膚の状態に応じて柔軟に変動することが明らかになった。成功確率の変動に関する分子メカニズムや複数種類の起痒物質と発痛物質の混合投与の影響はいまだ明らかになっておらず、さらなる解析が必要である。これらの研究状況を評価して、おおむね順調であると考える。

今後の研究の推進方策

今後は複数の痒み・発痛物質の混合投与における止痒成功確率の変動と脊髄の痒み・痛み神経伝達経路に着目した止痒成功確率の変動について解析するとともにこれまでの研究結果を論文として発表する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は二つある。一つ目は研究成果を論文として発表するための使用額がいまだ使用されていないである。二つ目は脊髄神経伝達経路に着目した急性痒み・痛み誘発掻破行動における止痒成功確率の変動の解析が実施されていない点である。
そこで本年度では止痒成功確率について脊髄に着目した分子メカニズムの解明と論文投稿に対して研究費が使用される計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] A problem of individual differences of behavioral data for itch-induced scratching bouts in mice2024

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Honda, Mitsutoshi Tominaga, Kenji Takamori
    • 学会等名
      第101回日本生理学会大会
  • [学会発表] Random repeat length of scratching bouts derived from Bernoulli trials2023

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Honda, Mitsutoshi Tominaga, Kenji Takamori
    • 学会等名
      12th World Congress on Itch
    • 国際学会
  • [学会発表] New insight to understand the itch sensation as numerical data in mice2023

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Honda, Mitsutoshi Tominaga, Kenji Takamori
    • 学会等名
      1st International Societies for Investigative Dermatology Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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