研究実績の概要 |
本研究では、軸索型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2)患者において新たにみつかった、分子モーターKIF1BβのIGF1R結合ドメインの希少な一塩基変異に注目している。このKIF1Bβ変異がKIF1Bβ-IGF1R-PI3Kカスケードに与える影響を調べることで、CMT2発症の一因を探ることが目的である。 昨年度は、マウス海馬初代培養ニューロンを用いて、KIF1Bβ変異体の発現とニューロンの生存・軸索伸長の関連を検証した。KIF1Bノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンはDIV2-3で軸索伸長が著しく損なわれることが知られている (Zhao et al., 2001, Cell; Xu et al., 2018, JCB)。そこでKIF1BノックアウトマウスにEGFP-KIF1B発現ベクターを導入し、軸索伸長のレスキュー実験を試みた。 まず最初に、様々なトランスフェクション法を試したところ、レンチウイルスベクターでKIF1B発現効率が高いことがわかった。この方法でKIF1Bノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンにEGFP-KIF1BαおよびEGFP-KIF1Bβを発現させたのち、免疫細胞化学的に染色し、コンフォーカル顕微鏡で軸索長と分枝数を分析することでニューロンの形態を観察した。 その結果、KIF1Bノックアウトニューロンは以前の報告通り全ての突起が短いのに対して、EGFP-KIF1BαとEGFP-KIF1Bβを発現させると軸索が有意に長く伸びることが確認された。一方、EGFP-KIF1Bαのみを発現させ、KIF1Bβがないニューロンでは有意に突起が短かった。そして、EGFP-KIF1BαとEGFP-変異型KIF1Bβを発現させた場合も軸索が有意に短くなることがわかった。
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