研究実績の概要 |
本研究の目的は、分子モーターKIF1Bβの変異がKIF1Bβ-IGF1R-PI3Kカスケードに与える影響を調べることで、軸索型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2)発症の一因を探ることである。本研究では、CMT2患者で見つかったKIF1BβにおけるIGF1R結合ドメインの一塩基変異に注目している。 2022年度は、マウス海馬初代培養ニューロンを用いて、KIF1Bβ変異体の発現とニューロンの生存・軸索伸長の関連を検証した。KIF1Bノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンはDIV2からDIV3で軸索伸長が著しく損なわれることが知られている (Zhao et al., 2001, Cell; Xu et al., 2018, JCB)。そこでKIF1BノックアウトマウスにEGFP- KIF1BαおよびEGFP- KIF1Bβの発現ベクターを導入し、軸索伸長のレスキュー実験を試みた。まず最初に、様々なトランスフェクション法を試したところ、レンチウイルスベクターでのKIF1B発現効率が高いことがわかった。精製したレンチウイルスベクターを、KIF1Bノックアウトマウスの海馬初代培養ニューロンに添加したのち、免疫細胞化学的に染色し、コンフォーカル顕微鏡で軸索長と分枝数を分析することでニューロンの形態を観察した。 その結果、KIF1Bノックアウトニューロンは以前の報告通り全ての突起が短いのに対して、KIF1BαとKIF1Bβを共発現させると軸索が有意に長く伸びることが確認された。一方、KIF1Bαのみを発現させ、KIF1Bβがないニューロンでは有意に突起が短かった。そして、KIF1Bαと変異型KIF1Bβを発現させた場合も軸索が有意に短くなることがわかった。 2023年度は、育児休業取得のため、研究を実施しなかった。
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