研究課題/領域番号 |
22K15637
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
坪口 晋太朗 新潟大学, 脳研究所, 助教 (50912002)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | AAV / spreading of TDP-43 / propagation of TDP-43 / mouse model / ALS |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では,異常TDP-43が,局所から伝播し広がることで病態が進展する仮説が提唱されている.しかし,実際に生体の運動神経回路内を異常TDP-43が伝播しうるのかは明らかになっていない.本研究では,大脳・脊髄・筋細胞の任意の領域において,細胞種特異的にTDP-43凝集体を形成するALSモデルマウスを確立し,運動神経回路内を異常TDP-43が伝播するか,その伝播様式を明らかにすることを目的とする.アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus: AAV)を用い,マウス大脳・脊髄・筋の各領域・細胞種特異的に,TDP-43凝集体を形成し,運動神経回路内における異常TDP-43の伝播様式を明らかにする.本研究から,TDP-43の伝播によるALSの病態進展に対する治療戦略の確立に貢献する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,凝集体を形成しうるTDP-43変異を選定し,この変異TDP-43を発現するAAVを作製した.大脳皮質に注入したところ,神経細胞にTDP-43凝集体を誘導でき,大脳皮質に異常TDP-43を誘導するモデルを確立することができた.大脳皮質を原発としたモデルでは,大脳皮質のニューロンが経時的に減少し,さらに脊髄錐体路における軸索も,経時的に減少することがわかった.異常TDP-43の伝播については,異常TDP-43は脊髄灰白質に伝播しないものの,脊髄錐体路に経時的に出現し,増加することが分かった.また,運動機能の経時的な評価を行ったところ,長期には顕著な変化が現れないことが明らかになった.次に,脊髄に変異TDP-43を発現するAAVを注入したところ,同様に異常TDP-43の発現を誘導できることを確認し,脊髄に異常TDP-43を誘導するモデルを確立することができた.脊髄を原発としたモデルでは,短期間に著明な細胞死を引き起こすことが分かった.次に,前肢骨格筋に変異TDP-43を発現するAAVを注入したところ,同様に異常TDP-43の発現を誘導できることを確認し,筋細胞に異常TDP-43を発現するモデルを確立することができた.得られた3つのモデルにより,TDP-43による病態進展の機序を理解する実験モデルを確立することができた.これらの成果は,ALSの病態機序の理解と治療標的の探索へつながるものと期待される.
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今後の研究の推進方策 |
大脳皮質に異常TDP-43を誘導するモデルにおいて,脊髄錐体路に経時的に出現する異常TDP-43が,神経細胞に伝播するのか,もしくはグリア細胞に伝播するのかを検証する.さらに,グリア細胞の活性化についても検証する.脊髄に変異TDP-43を誘導するモデルにおいては,脊髄のニューロンの経時的変化を確認する.脊髄のニューロンは,運動ニューロンと介在ニューロンそれぞれについて変化を検証する.筋肉に変異TDP-43を誘導するモデルにおいては,脊髄への伝播と,筋における病理学的変化を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は,今年度同様に,アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus: AAV)を用いた実験の継続を行う.同実験に必要な物品の購入を予定する.
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