研究課題/領域番号 |
22K15639
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
中野 将希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (00823890)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / Amyloid-β / 老化 / 液性因子 / 並体結合 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の最大の危険因子が加齢つまり老化であることはよく知られるが、『個体老化により、どのような分子がどのようにアルツハイマー病発症を促進するのか?』という基本的な問いすら明らかにされていない。本研究では、脳内Aβ蓄積と個体老化を関連づけることが可能なマウス並体結合や、マイクロダイアリシス、RNA-seq解析など実績のある新旧の手法を組みあわせることで、個体老化に伴い全身性循環因子が脳内Aβ蓄積を促進ないし抑制するメカニズムとそれに関与する分子実体を明らかにすることを目的としている。 「(A):Aβ蓄積前APPノックイン (KI)マウス (12ヶ月齢)と若齢野生型 (WT)マウス (2ヶ月齢)」、「(B):Aβ蓄積前APP-KIマウス (12ヶ月齢)と同齢WTマウス (12ヶ月齢)」、「(C):Aβ蓄積前APP-KIマウス (12ヶ月齢)と老齢WTマウス (18ヶ月齢)」のペアで循環系を共有させる並体結合を行った結果、APP-KIマウスの大脳Aβ沈着を蛍光免疫組織染色法とELISAにて評価すると、(A)<(B)<(C)となることが観察されている。そのAPP-KIマウス大脳皮質で網羅的RNA-seq解析を行うと、(A)<(B)<(C)ないし(A)>(B)>(C)に応じた変化を示す10分子が脳内一次候補分子として挙げた。初年度は、脳内発現部位・細胞種、アルツハイマー病発症との相関、Aβ代謝との機能的関連、加齢に伴う発現レベルの変化などを培養細胞やマウス個体やヒト剖検脳組織を用いて解析を進めた。その結果、10候補分子中少なくとも2分子はAβ沈着に関与する分子であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若齢マウスと並体結合した老齢APPノックイン (KI)マウスの脳(A)、同齢マウスと並体結合したAPP-KIマウスの脳(B)および老齢マウスと並体結合した若齢APP-KIマウスの脳(C)から網羅的RNA-Seq解析を行い、発現レベルが(A)<(B)<(C)ないし(A)>(B)>(C)であった分子を抽出し、定量的リアルタイムPCR解析にて確認することにより同定した10候補因子の機能解析や臨床検体を用いた解析を進めた。脳内Aβ沈着は産生・分解・凝集のバランスにより制御されるため、まずは個体レベルでの評価を行うことにした。同定した10候補因子についてAPP-KIマウスバックグラウンドのトランスジェニックマウスを作出し、脳内Aβ沈着への効果を評価した。一方で、アルツハイマー病患者剖検脳を用いて同定した10候補因子の発現量も評価した。これらの評価により、10候補分子中少なくとも2分子がAβ沈着に関与する分子であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的解析による目的因子の同定:目的因子の存在が示唆された結果を受け、当該マウス血清タンパク質の分子サイズ等による分画化から候補因子を絞り込む。また、若齢および老齢野生型マウスの血清中全ペプチドを安定同位体標識しLC-MS/MS解析することで発現に差のあるタンパク質をリスト化し、脳Aβ蓄積に対する効果を評価し候補因子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた計画よりも高額な試薬の使用量が若干少なく、次年度以降の解析外注費に多く充てる予定である。
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