研究課題/領域番号 |
22K15654
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小松 鉄平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60723856)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / 動物モデル / 幹細胞 / 再生医療 / ラット / 中大脳動脈閉塞 |
研究実績の概要 |
既存治療では克服できない疾患に対して細胞治療が期待され、細胞をシート状もしくはスフェロイド状に培養し体内へ投与する方法が報告されている。一方、細胞をファイバー化し侵襲性の低い血管内治療への応用は行われていない。 本研究の目的は、血管内治療に応用可能な間葉系幹細胞を含有したハイドロゲルファイバーを開発すること。さらに、同ファイバーをラットとマーモセット脳梗塞モデルの脳動脈に留置し神経機能の改善効果を証明することである。本研究の成果は脳梗塞以外の他の臓器不全(腎不全、心不全、肝不全など)にも応用でき、全ての臓器の再生治療を担える可能性がある。 本年度は、間葉系幹細胞細胞含有ファイバー作製の加工方法を検証した。血管内にファイバーを留置するため一定程度の強度が求められるが、強度が安定した細胞含有ファイバーの作製に難渋した。強度が不安定なファイバーでは中大脳動脈への留置が困難であった。生理食塩水で保存するとファイバーが劣化することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管内にファイバーを留置するため一定程度の強度が求められるが、強度が安定した細胞含有ファイバーの作製に難渋した。強度が不安定なファイバーでは中大脳動脈への留置が困難であった。生理食塩水で保存するとファイバーが劣化することが判明したため、2024年度は冷凍保存を検討する予定。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ. ヒト間葉系幹細胞を含むX線不透過ハイドロゲルファイバーから分泌されるサイトカインによる長期のパラクライン効果を明らかにする 二重管の内側にヒト間葉系幹細胞とコラーゲン懸濁液、外側にX線不透過ジルコニアとアルギン酸ナトリウム水溶液を流し、直径数百μmのハイドロゲルファイバーを作製する。ヒト間葉系幹細胞から分泌されるサイトカイン量を経時的に測定し、懸濁液とファイバーとで分泌量を比較する。動脈内に生着させると細胞の性質が変化する可能性があるため、ラットの脳動脈内に留置したファイバーのサイトカイン量も経時的に測定し評価する。長期のパラクライン効果を得られる最適なファイバーの純化・加工・保存方法を確立する。生理食塩水で保存するとファイバーが劣化することが判明したため、2024年度は冷凍保存を検討する予定。
Ⅱ. ラットと小型霊長類マーモセットの脳梗塞部位の動脈内に、ヒト間葉系幹細胞を含むファイバーを生着させ、脳梗塞後の神経再生と運動機能の改善効果を明らかにする 脳梗塞ラットモデルに対して、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞含有ファイバーを経カテーテル的に中大脳動脈に投与する。治療介入後、1日後、7日後、14日後、30日後に、細胞含有ファイバーの体内分布をX線で確認し、9.4テスラ高磁場MRIによる脳梗塞体積・神経経路(拡散テンソル)変化の評価、神経行動学評価(ロタロッド、トレッドミル、ハイスピードカメラ画像解析)を行い、その後病理学的解析をする。細胞非投与群と比較し、梗塞体積の縮小効果、MRI拡散テンソルによる神経経路の修復効果、運動機能の改善効果、グリア細胞、神経細胞・軸索再生効果を検証する。また投与した細胞含有ファイバーの外観形態評価、生存細胞評価、細胞分化試験を実施する。必要に応じて、カテーテルによるラット新規脳梗塞モデル作製技術を応用し、これまで困難であったマーモセットの新規脳梗塞モデル作製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
カテーテルやワイヤー、造影剤、培地など、研究室の在庫を使用したため、今年度の購入数が予定より少なかった。また、安定したファイバーの作製に難渋し、予定通り研究が進捗しなかったため、使用した動物が少なかった。またコロナ感染などの対応として学会への現地参加を一部取りやめた。
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