研究課題/領域番号 |
22K15660
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小高 陽樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40831243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 老化細胞 / 中枢神経系 / 糖鎖 / 1細胞解析 |
研究実績の概要 |
近年、老化に伴う身体機能の低下には、老化に伴い各組織中に出現する老化細胞が関与していることが明らかとなり、抗老化医療の新たなターゲットとして注目されている。特に細胞の外周を覆うように存在する糖鎖は、医薬品によるアクセスが容易なため有望な創薬ターゲットである。培養細胞の老化モデル系では、細胞老化に伴う細胞表面糖鎖の性状変化が報告されている。一方で、生体組織中の老化細胞はその存在比率の低さのため、バルクでの解析が難しく、培養細胞の老化モデル系で見られるような糖鎖変化が、生体中の老化細胞の糖鎖変化を正しく反映できているのか不明である。本研究では、我々の報告した1細胞糖鎖・RNAシークエンス法(scGR-seq)(Minoshima F, Ozaki H, Odaka H, Tateno H. iScience. 2021)により単一細胞のRNA情報と糖鎖情報を取得することで、これまで不明だった脳組織中に存在する老化細胞の糖鎖変化を明らかにする。さらに、生体中の糖鎖変化を指標として培養細胞の老化モデル系を構築することで、生体の細胞老化を模したモデル系の構築を目指す。こうした細胞モデルを利用し、糖鎖と細胞表現型の解析を行うことで、細胞老化による糖鎖変化が持つ生理的役割についてより深い洞察を得ることが期待できる。 これまでに、動物実験の実施に伴う倫理審査の申請を行い、scGR-seq実験実施のための準備態勢を整えている。本年度は、マウス脳からの単一細胞分取方法の検討を行った。細胞の生細胞率と回収効率は乖離液組成により異なり、最終的に解析に十分量の単一細胞を採取できる条件を決定した。また、採取した単一細胞をフローサイトメトリーで解析することにより、重要な老化指標であるリポフスチンの蓄積に伴う自家蛍光の発生を検出できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、マウス脳からの単一細胞懸濁液の調製法を検討し、十分量の単一細胞を採取できる条件を決定した。さらに、採取した細胞を使ってFlowcytometry解析を行ったところ、老齢マウス脳において強い自家蛍光を発する細胞集団が生じていることが確認された。これは、老化に伴う細胞内リポフスチンの蓄積によるものと考えられ、重要な老化細胞の指標となり得る。
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今後の研究の推進方策 |
老齢マウスの強自家蛍光細胞を潜在的な老化細胞と位置づけ、これらを抗体オリゴヌクレオチドで標識した上でscGR-seqで解析を行う。これにより、SASP関連遺伝子発現とリポフスチン蓄積という2つの老化指標から老化細胞を定義づけることが可能となり、各老化指標と糖鎖発現の関連性を解析することが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中は、scGR-seqを行わなかったため、次世代シークエンサーの解析費を次年度に繰り越した。
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