研究課題
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) は世界的な流行を引き起こし、ワクチン接種で得られた抗体からの逃避能力を獲得した感染力の強い変異株の流行が拡大している。COVID-19患者の数%は重症化し致死的な経過を辿り、ワクチン接種後の感染例でも重症化の報告がある。このような状況において、大量の感染者の中から重症化する症例を予測し、適切な治療を実施するための重症化識別マーカーを確立することは、治療・予防法の開発と共に喫緊の課題である。そこで、本研究ではこれらの発見に立脚し、重症化に伴う特定の免疫応答を明らかにし、重症化に先行して変化する免疫細胞/サイトカイン(=重症化予測マーカー)を同定する。当該年度の研究では、SARS-CoV-2 に感染した患者の中から軽症から重症例の患者を選出し、末梢血単核細胞を回収した。そしてこれらのサンプルを用いてsingle cell RNA-seqのサンプル調整を行った。また、SARS-CoV-2 に感染した患者やワクチンを2回接種した医療従事者から採取した血清を用いて、中和抗体活性、抗S蛋白抗体:IgG, IgM、抗N蛋白体:IgG, IgMについて測定し、臨床情報と合わせて評価した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究では、SARS-CoV-2 に感染した患者の中から軽症から重症例の患者6名を選出し、経過中に2点または3点の検体を得て、合計14検体の末梢血単核細胞を回収した。そしてこれらのサンプルを用いてsingle cell RNA-seqのサンプル調整を進めている。本年度の研究成果としては、SARS-CoV-2 に感染した患者やワクチンを2回接種した医療従事者から採取した146~332検体分の血清を用いて、中和抗体活性、抗S蛋白抗体:IgG, IgM、抗N蛋白抗体:IgG, IgMについて測定し、臨床情報と合わせて評価した。抗S IgG抗体価は中和抗体活性を評価するのに有用であるが、結果の解釈に注意が必要であることが分かり、引き続き解析を進めることとした。
今後の研究では、single cell RNA-seq解析を進め、シングルセルレベルで免疫細胞クラスターの増減を検出する。また、重症度変化に伴うサイトカイン産生量の変化とリンパ球サブセットの増減を分析するため、マルチカラーフローサイトメトリー法を用いてリンパ球、単球サブセットを解析する。特に、予備研究において重症度変化に伴うサイトカイン産生量の増減が認められた、IL-6、IL-10、IL-18、CCL17、CXCL9、CRPを中心として解析を進める。SARS-CoV-2抗体検査に関しても引き続き解析を続ける。
SARS-CoV-2抗体データ(中和抗体活性、抗S蛋白抗体、抗N蛋白抗体)測定にかかる費用が当初の見込みよりも低く抑えられたため次年度使用額が生じた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
PLOS ONE
巻: 18 ページ: -
10.1371/journal.pone.0279779
巻: 17 ページ: -
10.1371/journal.pone.0274181
Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41598-022-19073-z