研究課題/領域番号 |
22K15685
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山崎 大 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (90836032)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膵脂肪 / 脂肪膵 / 膵脂肪沈着 / 肝脂肪 / 筋脂肪 / 内臓脂肪 / 脂肪分布 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
本年度、膵脂肪・肝脂肪・筋脂肪・内臓脂肪における脂肪分布パターンの同定と、その特徴の違いを、日本とドイツのデータで明らかにし、その結果を米国糖尿病学会で口頭発表するとともに、英文誌(Yamazaki et al. Diabetes 2022)に報告した。 本研究では、日本の1健診施設でCT検診を受診した658名と、6年の追跡期間中に糖尿病を発症した146名を対象としたケースコホート研究を行った。ドイツでは、Tuebingen Diabetes Family Studyに参加した319名を対象とした横断研究を行った。日本ではCT、ドイツではMRIを用いて膵脂肪・肝脂肪・筋脂肪・内臓脂肪を測定し、クラスター解析を行い、脂肪分布パターンを同定した。日本では2型糖尿病発症をアウトカムとし、ドイツでは75gブドウ糖負荷試験の結果をもとに、インスリン感受性・インスリン分泌能を評価した。 クラスター解析の結果、肝脂肪優位型・膵脂肪優位型・筋脂肪優位型・非脂肪蓄積型の4つの脂肪分布パターンが日本とドイツの両国で確認された。非脂肪蓄積型と比較した2型糖尿病発症のハザード比(95%信頼区間)は、肝脂肪優位型で4.02 (2.27-7.12)、膵脂肪優位型で3.38 (1.65-6.91)、筋脂肪優位型で1.95 (1.07-3.54)であった。インスリン感受性は肝脂肪優位型で最も低く、インスリン分泌能は膵脂肪優位型で特に低かった。 本研究では2型糖尿病リスクが異なる4つの脂肪分布パターンを同定するとともに、その脂肪分布パターンによってインスリン感受性とインスリン分泌能にも違いがあることがわかった。各臓器の脂肪蓄積を複合的に評価することの重要性を示した本研究結果は、2型糖尿病の予防や治療に関する個別化医療の基礎を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、日本とドイツにて、他部位の脂肪(肝脂肪・筋脂肪・内臓脂肪)を考慮した膵脂肪の2型糖尿病に対する影響を、「脂肪分布パターンと2型糖尿病」として論文化し、本研究の主目的の一つを達成できたことは、大きな進歩であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、膵体積を考慮した膵脂肪と糖尿病の関連についても、日本のCTデータと欧州のMRIデータを用いて解析する。また本研究のアウトカムである生活習慣病の一つとして、膵臓癌にも着目し、膵脂肪との関連を検討するとともに、他の生活習慣病についても広く評価する。
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