研究実績の概要 |
敗血症は、医療が発達した現代においても死亡率が30~50%と治療困難な病態であり、「早期診断と早期治療介入」が救命率を改善させる最も効果的な手段とされている。敗血症診断の臨床検査法として敗血症マーカーと血液培養検査の2つが用いられているが、早期診断と早期治療介入が重要な敗血症診断において現状の臨床検査法では不十分といえる。本研究は、第3世代PCRと呼ばれるデジタルPCR技術を用いて、敗血症診断の新たな臨床検査法の開発を目指すことを目的としている。デジタルPCRは微量な核酸検出や細菌の絶対定量が可能であり、本研究により培養前検体からの新たな細菌検出法の確立や血中細菌数を指標とした敗血症の重症度・治療効果判定への応用が期待される。 本研究では、デジタルPCRでどの程度微量な核酸検出が可能となるのかが重要になってくる。基礎的検討として、まずTotal bacteria検出用FAM標識probe/primerを用いてデジタルPCRの検出限界を確かめた。初期の検討ではバックグラウンドの蛍光強度が強く(70copies/μL)、微量な核酸検出に干渉し大きな問題となったが、試薬調整や実験手技等の見直し、環境サンプル対応のマスターミックスを用いることでこの問題を解決した。次に、どの程度微量な核酸が検出できるかを、大腸菌ゲノムDNA 1ng, 0.1ng, 0.01ng, 0.001ngの4点で検討した。ネガティブコントロールでも1copies/μL程度はバックグラウンドとして検出されてしまうものの、大腸菌ゲノムDNAが 0.001ngと微量であっても3copies/μL程度検出され、ネガティブコントロールと明確に区別することができた。これらの検討結果から、最適なPCR条件の設定や検出可能な細菌数の把握という初年度の研究計画はおおむね達成できたといえる。
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