研究課題/領域番号 |
22K15690
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦詞 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00750580)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 甲状腺オルガノイド / SLC26A7遺伝子 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
先天性甲状腺機能低下症の病態解明を目的として、甲状腺オルガノイドを用いた機能解析系の確立とその治療応用に対する研究課題であるが、甲状腺オルガノイドについては免疫染色でPax8、Tgといった遺伝子の発現を認め、甲状腺濾胞細胞と類似したキャラクタリゼーションを確認した。さらにZO1による免疫染色で極性の評価を実施したところ、甲状腺オルガノイドにおける内腔がいわゆる濾胞に相当することを確認し、解剖学的にも生体内における甲状腺の特性を十分保有しているモデルを確立することができた。試験管内で甲状腺に類似したモデルを精度高く樹立可能であることは、生体内に近い条件での機能評価に大きく貢献するものと考えている。 また、Slc26a4、Slc26a7ノックアウト(KO)マウスからも同様の手法で甲状腺オルガノイドを作成することができた。先天性甲状腺機能低下症のモデルマウスから甲状腺オルガノイド作成をした報告は本研究が初めてであり、甲状腺疾患の病態解明に結びつく重要なステップであると考える。しかしながら、甲状腺オルガノイドをマウスの腎皮膜下に野生型マウスから作成した甲状腺オルガノイドを移植し、マウスの甲状腺機能の変化、腎皮膜下での甲状腺オルガノイドの組織学的な機能評価を実施したが、手技的な問題もあり十分な評価はできなかった。 マウス甲状腺から甲状腺オルガノイドを作成し、レンチウイルスベクターを用いてVenusを発現させたところ問題なく遺伝子導入が可能であることが確認できた。次にSlc26a7とVenusが共発現をするベクターを構築し、その遺伝子発現効率を評価したが、十分な導入効率は得られていない。ヒトでの遺伝子治療を想定したiPS細胞を使用した実験には着手できていないが、既報の論文に従って今後構築を計画したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in vitroでオルガノイドの機能評価を行うために、甲状腺組織と類似した成熟した濾胞構造を再現する必要性があるが、遺伝子発現については概ね甲状腺組織と類似した発現を示しているものの、機能的な評価として、T3及びT4といった甲状腺ホルモンの産生の確認ができていない。 また、レンチウイルスによるオルガノイドへの遺伝子導入について、Venusの導入は問題なく可能である一方で、まだSlc26a7といった目的の遺伝子導入効率が十分ではないことで、その後の実験計画にも影響を及ぼしている。また実験に携わる研究者の確保が難しく実験の進行が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子導入効率の向上のために、現在はレンチウイルスベクターを使用しているが、ウイルス濃度の確保のためによりパッケージングに必要な細胞量を増やす、AAVベクターなど別のベクターへ変更するなどを検討している。また機能的解析系の確立を目指して、より高精度の甲状腺ホルモン測定系の導入を試みており、新たな測定系でマウスの血清での甲状腺機能評価を実施したところ良い結果が見られている。こういった測定系の変更によって、問題を解決できる可能性はある。また人的問題に対しては、新たに研究者が着任したため今後の研究の推進が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
甲状腺オルガノイドに対する研究内容に対して、別途研究費を取得しており、本研究費からの支払いが生じなかったことが要因と考える。 来年度はマウスの飼育、系統維持、甲状腺オルガノイドの作成の試薬あるいは甲状腺オルガノイドを用いたRNAseqといった遺伝学的な解析に対して使用を計画している。
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