研究課題/領域番号 |
22K15704
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
齋藤 光象 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (60516079)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アレキサンダー病 / 一次性アストロサイト病 / ミクログリア / 難治性疾患 / シングルセル遺伝子発現解析 / 2光子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトGFAP変異を導入したAxDモデルマウスを用いた。まずミクログリアの形態・分布を観察したところ、AxD病態(アストロサイト変化)が最も強い部位でのミクログリア高度集積と細胞形態変化を認めた。このようなミクログリアは、病的異常アストロサイトのシグナルを感知して強く応答し、機能的にも活性化状態にあると考えられた。この活性化したミクログリアの機能解析(2光子イメージング)のため、遺伝子改変動物(Iba1-tTA;tetO-GCaMP6)との交配によってミクログリアCa2+イメージング用のAxDモデルを作成して観察したところ、P2Y12受容体を介したミクログリアの活性化Ca2+シグナル活動を同定した。この活性化Ca2+シグナルの分子メカニズムを明らかにするため、シングルセル遺伝子発現解析・生化学的解析を行ったところ、AxDモデルではミクログリアのP2Y12受容体の発現量自体は変化なく、アストロサイト特異的なATP分解酵素遺伝子Entpd2(NTPDase2)の発現レベル低下を同定した。したがってこのNTPDase2発現低下によって生じたATP細胞外濃度上昇がP2Y12受容体を刺激し、ミクログリアCa2+シグナル活性化が生じていると結論づけた。このようなP2Y12受容体を介したミクログリア機能活性化の意義を検討するため、P2Y12受容体阻害薬を投与したところ、AxDマウスの脳組織病態が増悪した。すなわちミクログリアはアストロサイト病態に起因するATP細胞外濃度上昇を病態シグナルとしてP2Y12受容体を介して感知し、病態抑制方向に作用する、ということが明らかとなった。ミクログリアはAxD病態を監視し、アストロサイトと相互作用することによって病態を修飾改善する役割を有することを明らかにした。以上の成果を論文発表した(Saito et al. Brain 2024)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の目標を達成しつつあり、また論文発表もしている。
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今後の研究の推進方策 |
ミクログリアのAxD病態抑制の分子メカニズムをさらに解明することが課題である。AxD脳内で異常活性化している一部のミクログリアが有力な標的候補であると考える。一方でシングルセル解析により、ミクログリアのサブクラスタリング解析においては、複数のサブクラスターが同定され、各サブクラスターの特徴的な遺伝子発現プロファイルを抽出することができた。しかし、ミクログリアのどのサブクラスターがAxD病態の保護機能に関連しているか不明である。その遺伝子発現プロファイルを取得することを目的に、これまでシングルセル解析で同定したミクログリア亜集団のマーカーの免疫組織染色を行いながら、上記の活性化したミクログリア集団との対応関係を検証しながら、AxD病態関連性のミクログリアの特徴化に向けて推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の後半には、論文作成・投稿を中心に行った。次年度においては、今後の研究推進方策に記載したとおりの計画を実行する予定である。
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