研究課題/領域番号 |
22K15732
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
森井 芙貴子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60806842)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / ショウジョウバエ / 疾患モデル |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は致死的な神経変性疾患であり治療法がなく、その開発が切望されている。近年、神経変性疾患の危険因子として腸内細菌叢の変化による腸-脳相関異常が注目されている。中でも大腸菌由来アミロイド蛋白curliは宿主の異常蛋白凝集や中枢神経系の炎症を惹起する分子として注目されているが、curliがALSの病態に及ぼす影響は明らかではない。大腸菌由来アミロイド蛋白curliはパーキンソン病モデル線虫において運動機能、神経変性の増悪に関与し、さらに家族性ALS原因遺伝子SOD1を導入した線虫モデルでもcurli蛋白の発現で寿命の短縮が報告された。またcurliとALSについては、SOD1変異モデルマウスにおいてcurli産生大腸菌の投与群で非投与群と比較して運動機能、生命予後が悪化したと報告された。本研究はALSモデルショウジョウバエを用いてALSの病態形成における腸内細菌叢、特にcurli産生の影響について明らかにすることを目的として実施する。今年度はまず大腸菌由来アミロイド蛋白curliを運動神経特異的ヒト家族性ALS遺伝子TDP43(Q331K変異)トランスジェニックショウジョウバエに投与した。運動機能、生存期間はcurliの有無によって有意差を認めなかったが、高濃度の大腸菌を摂取した群では対照群、疾患群でわずかに生存期間が長い傾向が見られた。TDP43系統においてはCurliの毒性を大腸菌そのものの栄養的効果で打ち消している可能性が考えられた。現在、C9orf72モデル、SOD1モデルにおいて同様の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の系統の神経特異的TDP43野生型トランスジェニックショウジョウバエが強い毒性により致死的となることにより、野生型と変異型の比較が困難となった。そのため野生型と変異型の比較は中止し、変異型におけるアミロイド投与の有無のみで比較することにして研究を継続した。変異型TDP43トランスジェニック系統ではアミロイドの有無で表現型に変化が生じなかったため生化学的解析に進まず、他のALS原因遺伝子(SOD1、C9orf72)での検討を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
ALS原因遺伝子(SOD1、C9orf72)についてアミロイド投与による運動機能、生存期間の解析を進める。今年度の研究の中で大腸菌がショウジョウバエに栄養素として利用されている可能性が示唆され、疾患コントロールとして腸脳相関についてより強い影響が示唆されているパーキンソン病モデルショウジョウバエを新たに使用することにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
ショウジョウバエの交配実験を中心に行い、飼育用管ビンなど比較的安価な消耗品の支出が主であったため。次年度はショウジョウバエの系統購入や維持に要する消耗品費用(60万円程度)に加え、免疫生化学的検討や遺伝子発現解析に用いる各種消耗品について80万円程度、出版校正費に30万円程度の使用を見込んでいる。
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