研究実績の概要 |
今年度の研究実施計画:ヒトiPS細胞の脊髄運動ニューロンへの分化誘導:Chemically Transitional embryoid-body-like State (CTraS)法およびSendai virusを用いて、健常者ならびに家族性(孤発性)ALS患者由来ヒトiPS細胞にlhx3, ngn2, islet1の3因子を導入し、ヒト脊髄運動ニューロンに迅速かつ高効率に分化させる。
今年度の研究実績:健常者(4検体)ならびにゲノム編集を含む家族性ALS患者(TARDBP変異あるいはFUS変異を有する4検体)由来iPS細胞から迅速かつ高効率にヒト脊髄運動ニューロンを誘導する方法を開発した。これまでの方法では、脊髄運動ニューロン誘導の効率が悪く純度も低く、また誘導や評価の手順が複雑であるなどの制約があった。この新しいプロトコールでは、低分子ベースのアプローチ(CTraS法)と転写因子の導入(lhx3, ngn2, islet1、あるいはLHX3, NGN2, ISLET1)を組み合わせ、わずか2週間で80%近い誘導効率を達成した。また、細胞の不均一性を克服するため、iPS細胞由来のLMNの形態と生存率を、タイムラプス顕微鏡と機械学習/深層学習を用いて個々の細胞ごとに解析し、高精度な病態生理評価システムを確立した。このような迅速かつ高効率で簡便なプロトコールと1細胞単位の評価手法により、iPS細胞由来脊髄運動ニューロンを用いた大規模病態解析や創薬スクリーニングへの応用が可能となる。
上記成果について、下記プレプリントサーバーより参照可能。 Selena Setsu, Satoru Morimoto, Shiho Nakamura, Fumiko Ozawa, Yukihide Tomari, Hideyuki Okano. An efficient induction method for human spinal lower motor neurons and high-throughput image analysis at the single cell level. bioRxiv 2023.04.18.537412; doi: https://doi.org/10.1101/2023.04.18.537412
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、第2ステップである“健常者およびALS患者由来脊髄運動ニューロンにおけるGs/Giバランスとリン酸化カスケード”の解明に向けて、確立した運動ニューロンの分化誘導法を用いて、下記のプロセスを実施していく。 “健常者ならびにALS患者由来脊髄運動ニューロンの定常状態において、イムノブロットおよび各種リン酸化モチーフ抗体(PKA, PKC, MAPK/CDK, ATM/ATR, Akt, AMPK, CK2)を用いて、リン酸化シグナル伝達活性の評価を行う。”
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