研究課題/領域番号 |
22K15747
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
立花 昌子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60907715)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | delirium / multiple subtypes / interventions / prognostic impact |
研究実績の概要 |
妄想が顕在化するせん妄についての検討を行った。78名(13.0%)のせん妄患者に妄想がみられ、高齢(p<0.001)、女性(p<0.001)、一人暮らし(p<0.001)がせん妄患者における妄想の発現と有意に関連 していた。妄想形式は、迫害や被毒等の関係妄想に分類され,84.3%の患者が迫害者は医療スタッフであると確信していた。せん妄患者の妄想への対応や治療においては、妄想の背後にある孤立感や不安、恐怖を考慮した 心理的介入が必要であると考えられた(Tachibana M. et al. Int J Geriatr Psychiatry. 2022)。 急性脳機能障害であるカタトニア(医学的疾患あるいは精神疾患による)とせん妄の類似性と鑑別、現行の診断分類の問題について整理を行った。現行の診断基準におけるカタトニアとせん妄は実臨床ではしばしば重複し、せん妄の存在はカタトニアにおける医学的疾患の存在を強く示唆する指標となると考えられた(Tachibana M, et al. Front Psychiatry. 2022)。 せん妄が、各疾患における死亡率、施設入所、お よび認知機能低下に与える影響に関するレビューを作成した(Tachibana M. et al.Psychogeriatrics. 2023)。 暴力を生じたせん妄患者の臨床経過や院内死亡に関して、Cox比例ハザード分析を用いて、暴力、抗精神病薬、身体拘束と死亡との関連を検討した。暴力はせん妄患者184例(31.2%)に認められ、暴力を伴うせん妄患者では身体拘束(p<0.001)、リスペリドン(p=0.003)、オランザピン(p=0.002)、ハロペリドール(p<0.001)の使用、抗精神病薬の多剤併用、抗精神病薬のクロルプロマジン換算値が有意に高かった。Cox比例ハザード解析では、暴力は院内死亡率と関連しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に2022年度の研究計画として予定していた妄想が顕在化するせん妄のサブタイプについて、妄想の有病率、臨床的特徴を調査し、妄想の発現に関与する要 因についての解析を行い、結果を報告した。また、特定の精神症状とせん妄の臨床経過や予後との関連の解析の前段階として、レビュー を作成し報告した。2023年度は暴力を伴うせん妄患者の臨床経過と予後について、Cox比例ハザード解析を用いて検討を行い、結果をまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
臨床経過と予後については、各サブタイプにおけるICU滞在日数、在院日数、死亡率、使用された抗精神病薬等を評価し、統計解析は、カプラン/マイヤー、コックス比例ハザードモデル等の生存分析を適用し、検討を行う予定である。
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