統合失調症(SCZ)の中でも複数の抗精神病薬治療に反応を示さずにクロザピンの投与を受けている治療抵抗性統合失調症(TRS)患者の血漿エクソソーム(EXO)由来のmiRNAのグローバルな発現変化と、miRNA発現に対する本薬の影響を検討した。TRSとコントロールの血漿中EXOのグローバルなmiRNA発現変化をマイクロアレイ解析で検討した。次に、TRS、非TRS、およびコントロール間のmiRNA発現を定量的qPCRで確認した。また、in-vitroのSH-SY5Y細胞を用いてEXOのmiRNA発現の変化を調べた。miRNA発現を測定できるマイクロアレイ解析(対照9例対TRS患者9例)により、遺伝子オントロジー解析に基づいて神経細胞および脳の発達に関連する13のアップレギュレートおよび18のダウンレギュレートmiRNAが明らかになった。これらのうち、発現が上昇したmiR-675-3pは、qPCRによって同じコホートで検証された。逆に、miR-675-3pの発現量は、TRS非発症コホート(対照50人対TRS非発症患者50人、クロザピン投与なし)において有意に低下していた。本研究によってSCZ患者由来の血漿中EXOにおいて、神経機能に関連するグローバルなmiRNAの変化を同定し、その中でhsa-miR-675-3pの発現はクロザピン治療により上昇することを明らかにした。上記内容は2023年にTHE WORLD JOURNAL OF BIOLOGICAL PSYCHIATRY誌にアクセプトされた。その後も抗精神病薬の服用が胎児の発達に与える影響をモデル動物を使って解析を続けた。本研究から統合失調症の病態や抗精神病薬の作用機序にエクソソームmiRNAが影響している可能性を指摘することができた。
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