研究課題
令和5年度は、令和4年度に実施した解析結果について解釈を行い、米国神経精神薬理学会や米国生物学的精神医学会などの国際学会で積極的に発表を行った。発表の場で海外の学術関係者らと情報交換を行い、解析手法や結果についての討論・考察を行った。そしてその結果を踏まえて論文作成を行い、投稿した。さらには査読者からの指摘に対応して数回の改訂を経て国際英文専門誌であるSchizophreniaにおいて論文を出版した(Koshiyama et al. Schizophrenia 2024)。発表された論文では、統合失調症と健常者において右前頭葉、頭頂葉、後頭葉を広く結ぶ大脳白質の微小構造変化とガンマ帯域聴性定常反応の関連を調べたところ、ガンマ帯域聴性定常反応は、右前頭後頭束の大脳白質の統合性と健常者においてのみ有意な正の相関が見られたが、統合失調症では有意な相関は見られないという研究結果を報告した。これらの成果により、健常者で存在する右前頭後頭束の大脳白質構造とガンマ帯域聴性定常反応の関連が、統合失調症においては病態的な機序により失われている可能性が示された。本研究では統合失調症におけるガンマ帯域聴性定常反応の低下の神経基盤について、詳細な微小白質構造変化の空間情報を提供することができた。今後、本研究で見出された大脳白質の微小構造変化に注目した研究は、統合失調症の病態の解明に有用な情報をもたらす可能性がある。今後はガンマ帯域聴性定常反応に加えて、ミスマッチ陰性電位という脳波指標の神経基盤についてより詳しく調べることで統合失調症の病態を明らかにすることを目指して研究を展開していく方針である。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度に得ることができた解析結果をもとに令和5年度は学会発表を経て、論文発表を行うことができた。よって本研究はおおむね順調に進展している。
令和6年度は、ガンマ帯域聴性定常反応に加えて脳波指標であるミスマッチ陰性電位の神経基盤の研究を進める。まずは予備解析結果を得て、国際学会等で発表をできるよう準備を進める予定である。
データ解析機器について以前に使用していた機器を継続して利用できる状況にあることがわかり、若干繰越金が発生した。令和6年度はデータ解析結果を発表できるよう整備を進める。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Schizophrenia
巻: 10 ページ: 32
10.1038/s41537-024-00454-4
日本生物学的精神医学会誌
巻: 35 ページ: 46-51