研究実績の概要 |
本研究の目的は自閉スペクトラム症(ASD)を持つ小児における温冷覚異常が気分状態および親の精神状態に与える影響を明らかにすること、そしてASDを持つ小児におけるプラセボ効果の定量的検証である。過去文献を検討し背景情報を整理した。 10~14歳のASDを持つ小児を対象とした質問紙調査では、Short Sensory profile(SSP)とAutism Diagnostic Interview-Revised(ADI-R)を用い感覚機能障害の大きさがASDの重症度と関連していたとする報告(Green D, et al., 2016)や、ASDの主観的重症度、異常行動、そしてSSPに関連があるとした報告(Kurokawa, et al., 2021)など、ASD特性の強さ(異常行動を含む)、そして感覚の偏りが関連しているという文献は複数認められたが、親のQOLや気分症状との関連を調査した論文は現時点では1点のみであった(Su, X, et al., 2018)。また、ASDを持つ人に対してプラセボ効果を調査した研究については、薬物のプラセボ効果に焦点を当てたものがほとんどであり、基礎的な温痛覚に焦点を当てた論文は見当たらなかった。以上より、本研究は重要性・新規性ともに高いと考えられた。 一方、以下に述べるように倫理委員会の審査に時間を要し、予定症例数の実験実施には至らなかった。実験の準備を進め当該年度内に被験者2名のリクルートが完了、1名からのデータ取得が完了した。今後、必要症例数を確保し統計解析を行う予定である。
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