研究実績の概要 |
本研究の目的は自閉スペクトラム症(ASD)を持つ小児における温冷覚異常が気分状態および親の精神状態に与える影響を明らかにすること、そしてASDを持つ小児におけるプラセボ効果の定量的検証である。昨年度に引き続き、過去文献を検討し背景情報を整理した。 過去に親のQOLや気分症状との関連を調査した論文は現時点においても1件(Su, X, et al., 2018)のみであると考えられる。また、ASDを持つ人に対してプラセボ効果を調査した研究については、薬物のプラセボ効果に焦点を当てたものが大半を占め、基礎的な温痛覚に焦点を当てた論文は現状でも見当たらない。以上より、依然として本研究は重要性・新規性ともに高いことが推察される。 また、予定症例数の実験実施には至らないが、当該年度に疾患群2名、対象群5名からのデータ取得を終えた。症例数の限られた予備的な結果ではあるが、温覚閾値(warm detection thresholds: WDT)の高さと、冷痛覚閾値(cold pain thresholds)の個人内変動の大きさを組み合わせると、感覚プロファイル検査の総合得点を97.3%の精度で予測した。今後、必要症例数を確保し統計解析を行う予定である。
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