研究課題/領域番号 |
22K15777
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山口 博行 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 科研費研究員 (40822557)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 深層学習 / 機械学習 / 生成AI / 脳画像 / 次元的アプローチ |
研究実績の概要 |
現行の精神疾患のカテゴリーは、生物学的異質性があり、一貫した生物学的基盤を見出すのは困難であることが指摘されている。このような課題に対して、精神疾患を疾患横断的で、健常から異常までの連続的なスペクトラムと捉える次元的アプローチが注目されている。次元的なアプローチの実現には、大規模なデータセットから特徴量を抽出する技術が必要と考えられる。深層学習技術は、カテゴリーを教示することなく入力データから特徴量を自己組織的に抽出することが可能なため、次元的なアプローチに有効と考えられる。本研究では、大規模な精神疾患脳画像データセットを用いて、生成系深層学習モデルを開発し、疾患横断的で連続的な特徴空間の分布を抽出することを目的とする。 令和5年度は、主に二つのモデル構築に取り組んだ。一つ目は脳構造画像から条件付き変分オートエンコーダーを用いてデータの分布を学習するモデルである。二つ目は敵対的生成ネットワークを用いた精神疾患の脳画像を生成するモデルである。条件付き変分オートエンコーダーでは、条件に応じて生成する脳画像が変化するかを検討したが、生成画像の変化をコントロールするには至らなかった。敵対的生成ネットワークでは統合失調症の脳画像の生成を行い、画像の妥当性を検討した。今後は、モデルの妥当性を検証し、画像の生成を進めるとともに特徴量の解析を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ネットワークの学習は上手くいって生成が十分にできても、生成画像のコントロールに難渋している。生成画像についても定性的には十分であっても、実際の疾患における情報を保持できているかは十分な検証ができているとまでは言えない。検証作業に時間がかかっているが、これが終われば特徴量の解析にも進むことができ、進捗の挽回は可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、変分オートエンコーダーと敵対的生成ネットワークを用いたモデルを検討していく。生成画像の妥当性の検討のために、統計的手法や機械学習モデルを用いて、疾患らしさが表現できているかみていく。特徴量の解析を進め、生成の強みを生かしたシミュレーションを検討していきたい。また、扱うデータセットに関しては精神疾患だけでなく、認知症などの神経疾患にも拡大しより広い分布の脳の変化を可視化したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度の使用額としては、研究室内の設備を利用できる部分が多かったため、クラウドコンピューティングサービスの利用の必要がなかった。次年度は、大規模データセットを用いた計算を行っていくことになるため、より計算リソースが必要となると考えられる。そのため、クラウドコンピューティングサービスの利用や高機能計算機購入費用に当てることを考えている。これらの計算リソースを用いて、変分オートエンコーダーと敵対的生成ネットワークのモデルを改良し、より大規模な脳画像データセットで評価していく予定である。
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