研究実績の概要 |
新型コロナウイルス禍における子どもたちの動画視聴時間やゲーム時間の変化とメンタルヘルスとの関連を調査した。対象は令和3年5~6月及び同年11月~12月に5歳児発達健診精検を受けた5歳児131名(男:女=85, 46)である。CRISIS AFAR日本語版を用いて、動画視聴やゲームに費やす時間をコロナ禍前後で比較した。健診では、子どもの強さと困難さのアンケート保護者版(PSDQ)、保護者の育児ストレス(PSIC)などの尺度を用いた。PSDQは情緒、行為、多動不注意、仲間、向社会的行動の5つの下位尺度からなり、それぞれLow need, Some need, High needに分類した。統計はカイ二乗検定、Spearmanの順位相関分析を用いた(p<0.05)。その結果、コロナ禍前後で動画視聴時間は「1時間未満」が23%から16%に減少し、「4時間以上」が8%から12%に増加した。カイ二乗検定の結果、動画視聴時間が増加した群では、PSDQ情緒とPSDQ行為がSome needないしHigh needの児が優位に多かった(p=0.028, p=0.013)。また、Spearmanの順位相関分析の結果、ゲーム時間の変化とPSICとの間に負の相関(ρ=-0.19)が認められた。コロナ禍において動画視聴時間が増加した児は、情緒や行為の問題が多かった。一方、児のゲーム時間が増加した群で保護者の育児ストレスが低かった。このことから、保護者が在宅勤務や家事に集中するためのツールとしてゲームが用いられている可能性が示唆されたが、因果関係について言及はできず更なる調査が必要である。
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