研究実績の概要 |
躁的因子を有するうつ病患者において、将来的な双極性障害への移行を予測する指標や治療に関する科学的根拠が現時点では不足しているため、まずはじめに、うつ病患者における躁的因子と治療薬との関係性について予備的な検討を行っている。具体的には、DSM-5にて操作的には大うつ病性障害の診断基準を満たす18~65歳の外来通院患者の中で、6ヶ月間主たる治療薬の変更が無い長期安定患者を対象とし、The Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self Report (QIDS-SR)の日本語版、Temperament Evaluation of Memphis, Pisa, Paris, and San Diego-Auto questionnaire (TEMPS-A)の日本語版、Bipolarity Index (BI)の日本語版、そして処方薬の調査を行っている。組み入れられた患者を主剤が抗うつ薬のみの群(抗うつ薬群)と抗精神病薬や気分安定薬を使用している群(抗精神病薬・気分安定薬群)の2群に分け、BIとの関係等を統計学的に検討する方向である。本研究は杏林大学医学部倫理委員会及び順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院倫理委員会の承認を得て、個人が特定できないようプライバシー保護に十分配慮して実施している。これまで本研究の背景に関して、第15回日本不安症学会学術大会および第41回日本社会精神医学会にて学会発表を行ってきた。そして現在は上記2施設あわせて72名の患者が組み入れられており、本年7月に開催される第20回日本うつ病学会総会で予備的結果を発表する予定である。
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