研究課題/領域番号 |
22K15795
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
古山 貴文 金沢医科大学, 医学部, 講師 (20802268)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ADHD / ドーパミン / ファイバーフォトメトリー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、行動・ドーパミン・神経活動を同時計測する実験環境を構築し、注意欠陥多動性障害(ADHD)モデル動物に適用することで、その症状と神経機構の連関を明らかにすることである。ADHDは不注意、多動、衝動性の行動がある神経発達性精神障害であり、小児の5~8%、成人の3~4%が罹患する。この精神障害により、不注意が続き、落ち着きがない行動が観測される。この行動が起因となり、ADHD症状の2次的障害である社会的な差別やいじめなどが起きてしまう。そのため、ADHDが発症する生物学的原因の究明や治療法の確立、ADHDを診断するための予測アルゴリズム創出は非常に重要である。当該年度では、ドーパミン神経を変性させる薬(6-OHDA)を幼獣マウスの脳室に投与することでADHDモデル動物を作製し、その行動評価を行った。さらに、正常個体に対してアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いることで、ドーパミンおよびカルシウムの蛍光バイオセンサを細胞に発現させ、ドーパミンおよびカルシウム濃度変化量を測定することに成功した。この手法をADHDモデル動物に適用し、ADHDの症状・ドーパミン・神経活動の連関を解明する。さらに、ADHDの処方薬として使用されている薬類を投与し、症状がどのように改善し、その時のドーパミン・神経活動の連関も明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、出生後5日目のC57BL/6Jマウスの脳室に6-OHDAを投与することでドーパミン神経を変性させた被験体を作成し、出生後24日目にオープンフィールドによる行動計測を行った。その結果、正常個体に比べ6-OHDAを投与した被験体の行動量が上昇した。これにより、6-OHDAで処置した被験体は、ADHD症状の1つである多動を生じることが分かった。 次に、異なる蛍光色を用いることで異なる物質を同時に計測可能となるため、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてC57BL/6Jマウスの前頭前皮質もしくは側坐核にドーパミン(d-Light1.3b、緑)およびカルシウム(jRGECO、赤)を細胞に発現させた。さらに、発現部位に光ファイバーカニューレを留置し、慢性的に計測できるようにした。被験体にAir puffを提示すると同時に、同一カニューレから470nmと560nmの励起光を照射し、520nmと600nmの蛍光強度をそれぞれ計測した。その結果、側坐核において、ドーパミンが上昇し、カルシウムが減少した。前頭前皮質では、ドーパミンが減少し、カルシウムが上昇した。以上の結果から、ドーパミンおよび神経活動に伴うカルシウム濃度変化を計測することに成功した。 以上の実験から当該年度の進行はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ADHDの症状である「不注意」、「衝動性」を確認する必要がある。そのため、行動評価に必要な実験環境を構築していく。さらに、ドーパミン・神経活動の同時計測法をADHDモデルマウスに適用し、正常個体とどのような違いが生じるかを明らかにしていく。また、ADHD患者に処方されている薬類(メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン)を投与することで、症状やドーパミン・神経活動がどのように変化するかを明らかにする。同時に、TRAP2マウス(タモキシフェンによりc-fos陽性細胞にcreを発現させるマウス)を用いて、それらの薬類がどの脳部位に関与しているかを解剖学的に明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入に対し、端数調整を行っていないため、1万円以下の繰り越し金が生じた。次年度は、繰越金も含め、行動装置や試薬の購入に充当する。
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