研究実績の概要 |
造影剤を用いない非侵襲的な機能的MRI画像を複数用いた定量的解析法、すなわちマルチパラメトリックMRI解析が、若年層の頭蓋内腫瘍の良悪性診断に有用であるかを検証することを目的とした。 腫瘍内分子の評価はamide proton transfer(APT)画像、血流の評価はpseudocontinuous arterial spin labeling(pCASL)画像、拡散の評価はdiffusion weighted image(DWI)から得られたapparent diffusion coefficient(ADC)mapを使用した。令和4年度には、新たに開発した解析ソフトを用いて腫瘍の腫瘍内分子、血流、拡散の定量値におけるヒストグラム解析を行い、若年層の頭蓋内腫瘍の良悪性診断に有用であるかを検討した。本年度は良性腫瘍5例、悪性腫瘍15例で検討した。 若年層の頭蓋内悪性腫瘍では、良性よりもAPT値は高く、血流量は高く、ADC値は低かった。また、腫瘍の良悪性診断において、APT画像、pCASL画像、ADC mapを組み合わせて腫瘍を評価することでそれぞれの画像を単独で評価する場合と比較して診断能が向上した。 悪性腫瘍における高いAPT値は高い細胞密度や壊死によるもの、高い血流量は血管増生によるもの、低いADC値は高い細胞密度によるものと考えられた。開発した解析ソフトを用いることでヒストグラム解析が可能となり正確な腫瘍評価ができたと考えられる。 若年層の頭蓋内腫瘍の良悪性診断においてAPT, pCASL, ADCのヒストグラム解析は有用である可能性が示された。
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