研究実績の概要 |
本研究は原子力災害等により放出される放射性核種を体内に取り入れたことにより生じる被ばく(内部被ばく)の線量評価手法として用いられる体外計測法に着目し、測定対象の年齢・性別に評価結果が影響を受けないような体外計測手法の確立を目的としたものである。 令和5年度は国際放射線防護委員会(ICRP)により開発された人体内で放射性核種がどのような挙動を示すか計算するためのモデル(体内動態モデル)について文献調査を行い、方程式解法ソフトウェアにモデルを導入することにより、成人に対する放射性セシウム(Cs-137、Ba-137m)の体内動態を各吸収タイプ(type F, type M, type S)で計算した。ICRPの文献に示されている経時的な放射性核種の存在割合と本研究の計算結果を比較した結果、5%以内で一致しており、ICRPのモデルをよく再現できたことが確認された。 また、体内動態モデルにより得られた放射性核種の挙動が測定効率に対してどのくらいの影響を及ぼすか評価するため、ICRPボクセルファントムの各臓器及び組織を線源とした場合の測定効率をモンテカルロシミュレーションにより計算した。文献調査により、ボクセルファントムで規定されている臓器及び組織と体内動態モデルで用いられているコンパートメント(臓器または組織)の対応付けを行った。これにより、モンテカルロシミュレーションで得られた各臓器・組織が線源である場合の測定効率に対して体内動態モデルで計算した組織での放射性核種の存在割合で重みづけを行うことにより、体内動態を反映した測定効率を評価した。現在計算が終了している測定効率を用いて暫定的に評価した体内動態を反映した測定効率は吸収タイプがtype F, type M, type Sの場合と体内均一分布の場合を比較すると、その差はそれぞれ2, 10, 35%であった(摂取から100日後)。
|