研究課題/領域番号 |
22K15830
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
羽場 友信 藤田医科大学, 医療科学部, 講師 (00810748)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フォトンカウンティング / 実効原子番号画像 / 乳房X線撮影 / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、フォトンカウンティング技術を利用した新たな乳がん診断画像の開発である。フォトンカウンティング型X線検出器を用いることで実効原子番号画像(定量的な画像)や高コントラスト画像を生成することができ、乳がんの早期発見・早期治療に大きく貢献できる可能性がある。 上記の目標を達成するために、本研究では①解析手法の開発、②独自の画像処理の考案、③臨床評価のステップで解決すべき課題に取り組んでいる。 現時点で「①解析手法の開発」が完了している。フォトンカウンティング型X線検出器を用いて実効原子番号を解析するアルゴリズムは以下の通りである。始めに、「任意に」設定された複数のエネルギー帯域ごとに、検出器で光子数が計上される。計上された光子数に対して各種補正(ビームハードニング効果、検出器の応答特性)を行うことで、エネルギー帯域に応じた減弱係数が算出できる。算出された複数の減弱係数を基に指標を作成し、既知のデータベースより求めた「減弱係数指標と実効原子番号の変換テーブル」を用いることで、実効原子番号の推定が可能となる。このアルゴリズムにおいて、実効原子番号を精度よく推定するためには、エネルギー帯域を適切に設定する必要がある。しかし、適切なエネルギー帯域の設定方法は未だ解明されていなかった。 申請者は、この問題を解決するために、X線の統計誤差を考慮した適切なエネルギー帯域の解析方法を考案した。手法としては、モンテカルロシミュレーションを用いてポアソンノイズを理論X線スペクトルに乗せ、数十万通りあるエネルギー帯域の設定方法の中から適切なパターンを独自に作成したアルゴリズムで解析することである。結果として、管電圧50~80kVの範囲において、エネルギー帯域を決定するしきい値を29~45keVの範囲で設定することで、実効原子番号を±0.5以下の精度で評価できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では「①解析手法の開発」「②独自の画像処理の考案」「③臨床評価」の3つのステップで解決すべき課題に取り組んでいる。 2022年度は当初の予定通り「①解析手法の開発」まで完了した。 本研究成果は、第79回日本放射線技術学会総会学術大会(2023年4月)で報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策について、2023年度には「②独自の画像処理の考案」、2024年度には「③臨床評価」について取り組む予定である。 「②独自の画像処理の考案」については、フォトンカウンティング型X線検出器の特徴を活かして、複数のエネルギー画像に独自の画像処理を施すことで、高コントラストなエネルギー積分画像(従来X線画像)を生成する。生成した高コントラスト画像に対して、シミュレーションと実測による評価を行い、乳がん検出能の向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中に画像解析・モンテカルロシミュレーション用のコンピュータを購入する予定であったが、前段階での基礎検討に時間がかかったため、購入が遅れた。 次年度は、これらのコンピュータの購入費用に充てる予定である。
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