本年度は本研究の第一段階として、心筋梗塞後の心臓と脳のsigma-1受容体分布の変化について検証することとした。具体的には心筋梗塞ラットモデルを作成し、sigma-1受容体のトレーサーである125I-OI5Vを尾静脈から投与し、その後ラットを屠殺し、心臓と脳を取り出し、オートラジオグラフィでsigma-1受容体の分布を確認した。心臓において、心筋梗塞が生じた部位にはsigma-1受容体発現が多い傾向にあった。一方、脳では非特異的集積のみで心筋梗塞に関連した明らかなsigma-1受容体の発現は確認できなかった。心筋梗塞による心筋へのダメージ・ストレスに伴って、sigma-1受容体発現が見られる傾向にあると考えられたが、本年度の実験で心臓と脳のsigma-1受容体発現の明らかな相関は確認できなかった。 本年度の研究の意義として、手技・手順の確認と習熟、心筋梗塞モデルを用いた心臓・脳の関連の初期検討であった。本年度はコントロールモデルやシャムモデルの作成は行っていないため、心筋梗塞群とコントロール群・シャムモデル群との比較・検証はできていない。次年度以降はコントロール群においても心臓や脳のsigma-1受容体発現の相関について確認を行い、本年度の研究結果との比較を行い、改善点があれば研究計画の見直しを行う。また、新型コロナウイルス感染症流行による行動制限のため、学会の現地参加ができておらず、効率的な情報収集ができていなかったため、次年度からは積極的に学会の現地参加や発表を行い、情報収集や研究者間の交流を深めていく。
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