研究課題
超高磁場CSF flow評価法を用いた慢性虚血認知機能改善メカニズムの解明をテーマとした研究を行っている。近年、認知症の一因とされるアミロイドβ蛋白が、脳主幹動脈狭窄・閉塞症に対する血行再建術後に低下することが明らかにされた。また、脳脊髄液の流れ(CSF flow)と脳内アミロイドβ蛋白排出機構との関連も報告されている。そこで、慢性脳虚血患者に対して血行再建術を行い、その術前後にて、1)CSF flowが変化するのか否か、2)CSF flowの変化量がアミロイドβ蛋白変化量と相関しているか否か、について明らかにすることとした。初年度である本年度は、『慢性脳虚血症例では、健常者に比べ、脳血流同様にCSF flowが低下(鬱滞)しており、血行再建術後にCSF flowが正常化する』という仮説に沿って、ヒト用7 Tesla MRI(7TMRI)の拡散強調像に基づくCSF flow イメージング法で取得されたデータ解析を実施し、1)健常者10例に比べ、慢性脳虚血症例20例のCSF flowは有意に低下していること、2)クモ膜下腔のCSF flowは他の領域に比べ穏やかであり、第4脳室などではCSF flowが激しいことが分かった。現在、健常者10例のデータに関する論文はrevision中である。採択後に健常者と慢性脳虚血症例のCSF flowの違いに関する論文を投稿予定である。また、慢性脳虚血症例の血行再建術前後に7TMRIにて撮像を実施しており、これまでに8例の撮像を終えた。上記に加え、本年度は第50回日本磁気共鳴医学会大会に参加し、健常者の年代による脳内アミロイドβ排出経路の信号値の違いなどについて情報収集を行った。また、10th European-Japanese Cerebrovascular Congressに参加し、認知症に関してのMRI所見(白質病変やmicrobleedsによる認知機能の改善)に関する情報収集を行った
2: おおむね順調に進展している
目標症例数には到達しなかったが、術前後の撮像を8例で実施できたこと、また健常者のデータに関する論文もrevision中となったことから、概ね順調といえる。
慢性脳虚血症例の血行再建術前後の7TMRIにおける撮像を継続し、本年度内に20症例の到達を目標とする。また、健常者10例のデータに関する論文が採択後、慢性脳虚血症例に関する論文を投稿予定である。
7TMRI撮像に係る経費が想定より少なかったことや、症例数が少なく核種薬剤の費用を施設内経費でまかなえたため。
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American Journal of Neuroradiology
巻: 43 ページ: 972~977
10.3174/ajnr.A7561