研究課題/領域番号 |
22K15858
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
紺野 義浩 山形大学, 医学部, 助教 (30594303)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 膵癌 / 灌流CT / 早期診断 / ILE |
研究実績の概要 |
申請者が構築した膵灌流CT(PCT)の撮影プロトコールで得られた画像の解析結果から、膵癌における以下に示す3点が明らかとなった。①従来の画像検査で腫瘤が明確な例 (n=28)では、病変は背景膵臓に対して、平均値で血流量が56%, 血液量が21%減少、平均通過時間が71%延長した領域として捉えられる。②有意なFDG集積亢進を認めない非典型的な病変においても、パラメータ評価を踏まえることが膵癌診断の補助に役立つ例が見出される。③従来の画像検査で“腫瘤が捉えられない膵癌”-7例について、灌流マップ上でパラメータの変化域として5例(71%)において病変の検出が可能であった。これらはPCTを組み合わせた早い段階での膵癌診断手法の確立に一歩近づく成果であり、上記を含めた内容をまとめ、2022年北米放射線学会において発表を行った。 申請者が以前から着目していた、膵癌の初期段階において観察される造影CTにおける膵臓内後期増強 (intrapancreatic late enhancement: ILE)の特徴について検討を行った。病理学的に膵癌と診断された203人中、診断の6か月前から5年前に造影CTが評価可能な32例を調べたところ、次の3点が明らかとなった。①ILEは32例中14人 と”最も高い頻度”で認められる所見である。②限局性膵実質の萎縮や主膵管径の異常など他の所見を認める例に比べ、ILEを認めた例は“膵頭部病変が有意に高頻度である” 。③ILEという所見に着目することで読影者は後に顕在化する早期段階の膵頭病変をより多く検出し、さらに読影者間の一致性が向上する。以上を踏まえ、ILEが早期段階の膵癌検出のための重要な所見であることを示す論文を雑誌European Radiologyにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
早期段階の膵癌の画像診断に対しては予定通り前向きに検討を進められている。一方で、当該年度は画像検討に重点をおいていたため、新規の血清マーカーについて十分な検討を開始できておらず、全体の研究の進捗状況としては「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた前向きの研究を始める前に候補となるマーカーについて、培養細胞サンプルを用いたin vitroの検討から始め、早期段階の膵癌症例を対象とした後ろ向きの研究へと進めた上で、予定する研究へ繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は臨床的な画像検討に重点が置かれ、物品の購入が限られていたため、次年度使用額が生じた。次年度は細胞培養やサンプルの処理、各種測定キットなど基礎実験用の資材を多数準備する必要がある。経費はそれら必要な物品の購入に充てる計画である。
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