研究課題
重粒子線照射に先立ち、まず放射線照射が抗原特異的CD8+T細胞に与える影響の解析を行った。マウスへ皮下移植したE.G7-OVAは10Gy照射により、照射後1週間で消失した。放射線照射マウスにおけるOT-1細胞は非照射マウスと比較し有意に増加していた。 増加したOT-1細胞はエフェクターT細胞としてのサイトカイン産生能、Granzyme B産生能を有していた。In vivo cytotoxic assayを行うと、増加したOT-1細胞は 高い細胞障害活性を有していた。さらに両側大腿にE.G7-OVAを移植したマウスの片側のみに放射線照射を行うと、照射マウスでは非照射側の腫瘍も縮小するいわゆるアブスコパル効果が確認された。放射線照射により長期生存が得られたマウス (CRマウス)は、OT-1細胞がメモリーT細胞として長期に維持されていた。CRマウスにOVAを提示した骨髄由来樹状細 胞を尾静脈注射すると、6日後にOT-1細胞が増加し、メモリーT細胞としての機能を有していることが確認された。また、CRマウスにE.G7-OVAを再移植すると、腫瘍は生着せず、接種後8日目にOT-1細胞の増加がみられ、2次免疫応答により腫瘍を拒絶していることが確認された。 放射線照射に抗PD-1抗体を併用して同様の実験を行ったが、抗原特異的CD8T細胞の細胞数や機能において抗PD-1抗体の上乗せ効果は認めなかった。上記実験内容を論文としてまとめ、現在投稿準備中である。
3: やや遅れている
放射線照射が抗原特異的CD8T細胞に与える影響を解析する実験のみに終始してしまい、重粒子線照射を行う実験まではまだ到達できていない。
現在使用しているOVA発現細胞株はマウスリンパ腫の細胞株であり、放射線照射のみで強力に抗原特異的CD8T細胞が誘導されるため、抗PD-1抗体の上乗せ効果が示せなかったと推測している。固形癌である肺癌にOVA遺伝子を導入してOVA産生細胞株を樹立したが、腫瘍の生着が悪く同様の実験体系を確立するに至っていない。肝臓癌・大腸癌等の細胞株でもOVA産生細胞株を確立し、放射線照射と免疫チェック ポイント阻害剤併用による抗原特異的CD8T細胞の動態・機能解析、メモリーT細胞による2次免疫応答の解析を予定している。また重粒子線照射による抗原特異的CD8T細胞への影響に関する解析も並行して行っていく予定である。
本年度実施できなかった重粒子線照射の実験を行うための、抗体や実験消耗品等に今後使用予定である。
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