研究課題/領域番号 |
22K15862
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
岩崎 遼太 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20782139)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 獣医 / 加速器 / 骨肉腫 / BPA / LAT1 |
研究実績の概要 |
当該年度は犬の骨肉腫細胞株POSおよびHMPOSを使用して、BNCTの獣医領域への適用拡大の可能性を探るべく、以下の基礎実験を行った。 LAT1発現解析:ホウ素薬剤p-boronophenylalanine (BPA) の細胞内輸送を担うアミノ酸トランスポーターLAT1の発現を、Western Blottingにより解析した。その結果、両細胞株においてLAT1発現が確認された。 細胞内ホウ素濃度測定:BPA溶液中のホウ素10 (10B) 濃度をそれぞれ14、28および57 ppmに調製し, 各濃度のBPA添加0.5、1、2および4 h後の細胞内10B濃度をICP-AESにて測定した。その結果、両細胞株とも細胞内10B量に濃度依存性は認められたものの観察期間内での時間依存性はほぼ認められず、BPA添加2-4 h後にはおおむね平衡状態となった。 放射線照射実験:中性子線群、BNCT群 (28 ppmの10B添加2 h後に中性子線を照射)、および対照としてX線群 (1ー12 Gy) を設定し実施した。照射後はコロニー形成法により細胞生存率 (SF) およびD10値(SF=10%となる物理線量)を求め, 非ホウ素線量およびホウ素線量のX線等価線量換算係数 (それぞれRBEおよびCBE) をそれぞれ算出した。なお中性子は加速器中性子線源から、熱中性子フルエンス2.95×10^11-2.20×10^12 /cm2にて照射した。結果として、両細胞株において中性子線群よりもBNCT群でSFの大幅な低下がみられた。RBEおよびCBEは、POSにおいてそれぞれ3.45、2.52であり、HMPOSにおいてそれぞれ4.17、3.09と求まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は複数のがん種を用いた実験を予定していたが、Western BlottingおよびICP-AESを用いたLAT1発現解析および細胞内10B濃度測定の条件検討に時間を要し骨肉腫細胞株しか実験を完結できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
同様の実験を、血管肉腫や悪性黒色腫などの難治性がんを対象として継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は細胞株のみを用いてマウス等を用いた実験を実施しなかったことや、共同研究施設内で完結できた実験があったことなどが、次年度使用額が生じた理由である。次年度は想定していた実験に加えて、LAT1阻害薬を用いた細胞内ホウ素濃度測定や細胞照射実験を新たに計画しており、これらの実験に関わる諸費用が必要となる。
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