研究課題/領域番号 |
22K15879
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
子安 翔 京都大学, 医学研究科, 助教 (80781913)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | radiotheranostics / I-131 / 甲状腺癌 |
研究実績の概要 |
放射性核種標識分子を用いた核医学診断・治療(radiotheranostics)はイメージングの腫瘍特異性を治療用核種に応用した次世代の治療法として近年着目されており、分化型甲状腺癌に対するI-131ヨウ化ナトリウム内用療法(I-131 NaI治療)はその中で経験や歴史が最も深い。しかし、腫瘍へのI-131 NaIの集積が確認されるにもかかわらず治療抵抗性を生ずることが問題となっており、そのメカニズム解明と抵抗性の解消が喫緊の課題である。 2年目においては、ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9を利用しランダムに遺伝子をノックアウトした甲状腺関連細胞ライブラリーを作る前提としてどういった遺伝子群がとられてくるかを想定する上で重要な基礎データとして、我々が用いる甲状腺癌細胞でのvitro の治療実験系においてβ線の飛程がどの程度影響するか、すなわちクロスファイア効果がvitro 上で再現できるかを引き続き検証した。結果1-5%程度のNIS陽性細胞の混在でもクロスファイア効果が十分みられることが再現された。また、不均一なモデルとしてK1-NIS細胞をfocal に配置し、蛍光顕微鏡写真をもとに数理的に線量を算出した場合に、トータルとしては同一線量であったとしてもNISを発現していないK1細胞への線量が低下することをシミュレーションした。これらは腫瘍への集積が同じであってもβ線治療抵抗性を生じうることの証左となる結果であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β線においてはdish 上でクロスファイア効果が再現されることが示された。 それにより、細胞レベルでβ線の細胞内集積性を低下させるような因子は実はスクリーニングモデルでは得られないことになることが確認された。 従って、治療トレーサーとして、細胞の飛程の短いα線を検討する必要があるという結論を得ることになった。 一方で、線量計算によって、NIS陽性細胞の分布を変えることで同居するNIS陰性細胞への線量が減弱することがシミュレートでき、新規研究のアイディアとコラボレーションを派生させることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
・α線放出核種として、アスタチンが挙げられる。 こちらの入手ルートを検討する。
・入手できればアスタチンを今回樹立しているシステムに導入し、クロスファイア効果がβ線に比べると発生しないことを確認し、遺伝子スクリーニングに進めていく。
・今回導入した数理モデルによる解析を進め、クロスファイヤ効果を2mmとした際に、どの程度の線量減弱が治療効果を減弱させているかを計算する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用核種の再検討に伴い、当該年度は数理解析モデルの検討などを行い、遺伝子スクリーニングの準備等を翌年度に行うことにしたため。
|