研究課題/領域番号 |
22K15890
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
茂木 佳菜 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医学物理士 (40740436)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 強度変調放射線治療 / 頭頸部癌 / 堅牢性 / 治療計画 |
研究実績の概要 |
頭頸部癌の強度変調放射線治療(IMRT)におけるロバスト治療計画法は,患者のセットアップエラーによる位置不確かさを最適化計算を用いて治療計画装置内部で考慮する方法であり,従来のターゲットにマージンを付加して照射体積を拡大する治療計画法とは大きく異なる。また,頭頸部癌患者の多くでは,治療期間中に体重減少による体型変化や急激な腫瘍の縮小や変形が起こるため,治療計画時と治療時の患者体内線量分布には乖離を生じている可能性がある。ロバスト治療計画法を臨床導入するための確かなエビデンスを得ることを目的に,ロバスト治療計画法で取得した線量分布が治療期間中の患者の幾何学的な不確かさに対し,十分な堅牢性を有するかどうかを検討した。 検討では,国立がん研究センター東病院でIMRTを受けた頭頸部癌患者10名の治療期間中に取得された診療画像を利用した。治療時に取得した、治療計画時からの患者の幾何学的な変化を有するコーンビームCT画像をもとに治療計画に用いるシミュレーション画像を作成し,治療時の患者体内線量分布を算出した。算出した線量分布から,腫瘍であるターゲットに対する線量カバレッジについて,治療計画時からの変化を追跡した。ターゲットに対する線量カバレッジは,従来の照射範囲を幾何学的に拡大する治療計画法で取得した線量分布と同等であり,ロバスト治療計画法で算出された線量分布が治療計画時からの患者の幾何学的な変化に対し,高い堅牢性を持つことを実証した。研究代表者はその成果まとめ,日本放射線腫瘍学会 第35回学術大会にて発表した。本検討は,国立がん研究センター東病院の倫理審査委員会の承認を得て実施された(2020-505頭頸部癌IMRTにおけるロバスト治療計画の有用性に関する研究)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ロバスト治療計画法の堅牢性の実証,シミュレーション画像を作成するための画像処理法の完成,及び,ロバスト治療計画法を用いた観察研究の実施を予定している。現在のところ,ロバスト治療計画法の堅牢性の実証ではデータ蓄積は完了し,解析およびまとめの段階であり,概ね順調である。シミュレーション画像作成のための画像処理法の完成では,人体ファントムの利用を予定しているが,まずはデジタルファントムにより同様の実験ができるかどうかを検討している段階である。ロバスト治療計画法を用いた観察研究では倫理審査が必要であり,現在準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討からロバスト治療計画法が従来の治療計画法と同等の線量分布の堅牢性を持つことが明らかになったため,次は数例での観察研究の実施する予定である。日常臨床で用いられている従来の治療計画法による線量制約を満たしうるロバスト治療計画が実現できた場合のみ,実臨床で後者を用いて治療を行い,前向きに治療効果や有害事象の評価や,患者生活の質(QOL, Quality of Life)の調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用ファントムはデジタルデータで代用できる可能性があるため当該年度での購入を見送った。生じた次年度使用額は、新型コロナウィルスの流行のため本研究申請時に予定されていなかった国際学会参加のための旅費として使用する。本研究の成果は、放射線治療の世界的な国際学会であるAstro american society for radiation oncology(Astro)のAnnual meetingにおいて演題として採択され、すでに発表することが決まっている。
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