研究課題/領域番号 |
22K15903
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
下西 成人 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10905392)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 凝固第V因子 / 抗凝固機能 / 血栓症 / APC抵抗性 |
研究実績の概要 |
液凝固第V因子(FV)は凝固、抗凝固の相反する機能を有する。それゆえにFV遺伝子の変異を病態として発症する先天性FV異常症は、出血傾向を呈する患者もいれば、血栓症を呈する患者も存在する。本研究では、血栓症を呈した患者さんの血栓傾向のスクリーニング法を開発すること、またFVの変異を導入した組み換えタンパク質を用いて、血栓が生じるメカニズムを解明するとこと、そして凝固第V因子の新たな機能の解明を行うことを目的としている。 まず、トロンボモジュリン添加凝固波形解析を用いて、Protein C (PC)経路異常を示す、つまり血栓傾向をしめすFV異常のスクリーニング法を開発した。トロンボモジュリンを添加すると凝固反応が抑制されるが、添加なしでは抑制効果は見られない。このトロンボモジュリンの有無における凝固反応の差を比較する。ここで、PC経路異常を示す、PC欠乏症、Protein S欠乏症、そしてAPC抵抗性を示すFVにおいては、その抑制効果がとぼしい。それゆえに、トロンボモジュリン添加の有無での凝固反応の差は小さくなる。この原理を用いて、トロンボモジュリン添加前後のパラメータ比のカットオフ値を0.5に設定したところ、APC抵抗性を示す、FVを検出することに成功した。この成果は2022年に論文化している。 また血栓を低したFV変異を有するFVを遺伝子組み換えによりHEK細胞を用いて発現し、精製を行った。組み換えFVを用いて、APC抵抗性を示すことを証明した。さらに、これらの変異はFVの軽鎖に存在するが、軽鎖の変異に特有の機能異常を証明した。この内容についても論文化している。現在、FVの有する抗凝固機能について解析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにトロンボモジュリン添加凝固波形解析を用いて、Factor V/protein S/portein C経路異常の迅速判定法を開発し、すでに論文として報告している。また、血栓症を呈した凝固第V因子の遺伝子組み換えタンパク質を発現し、それを用いて、凝固第V因子の軽鎖の有する抗凝固機能を明らかにし、論文として報告している。
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今後の研究の推進方策 |
在まで当初計画した実験計画を概ね順調に進めており、引き続き研究を進めていく予定である。凝固第V因子の軽鎖(FV Lch)の単離を行う。抗凝固におよぼす機能の解明を進めていく。具体的には、単離されたFV Lchを全血に添加した後にトロンボエラストグラフィを用いて、凝固機能の差を比較する。さらに血漿レベルにおいても包括的凝固機能検査(トロンビン先生、凝固波形解析)により比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画よりも消耗品が少ない量で研究遂行できたためであると思われる。翌年度の助成金と合わせて、当初計画での消耗品購入のための使用を引き続き行なっていく予定である。
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