研究課題
今年度は、抗RAB11Aモノクローナル抗体作製と疾患関連RAB11Aの機能解析を中心に実施した。まず、昨年度に引き続き抗RAB11Aモノクローナル抗体作製を行い、ノックアウト・ノックダウンサンプルを用いた特異性評価ならびにマウス脳組織・初代培養神経細胞の免疫染色の条件検討を行った。また、疾患関連RAB11A(K13N、K24R、R82CおよびS154L)の生化学的解析および神経系細胞の形態に及ぼす影響を検討した。生化学的解析では、RAB11A-K24RおよびS154Lは野生型(WT)と比較してGTPase活性が低下することが分かった。また、RAB11A-K13N、K24RおよびS154Lはエフェクター分子(FIP2およびFIP3)との相互作用が著しく低下した。さらに、細胞形態解析では、各種疾患関連RAB11AはWTが示す神経細胞の軸索・樹状突起の伸長促進作用は有さないが、伸長阻害作用も有さないことが分かった。一方で、培養オリゴデンドロサイトでは各種疾患関連RAB11Aの強制発現によって細胞突起形成不良が引き起こされたが、その表現型(細胞突起の長さ・分岐数、ミエリン様膜の有無)は多型によって異なっていた。以上の結果から、疾患関連RAB11Aは神経細胞よりオリゴデンドロサイトで病的作用を発揮していることが示された。本研究結果は、RAB11A遺伝子多型による神経発達障害・知的障害の分子病態機構を理解する上で重要な知見であると考える。
2: おおむね順調に進展している
疾患関連RAB11A(R33P)の機能解析に関する原著論文を出版した。また、他の多型についても解析を進めており着実に研究成果を得ている。抗RAB11Aモノクローナル抗体はRAB11Aに対する特異性を確認できたため、免疫染色の条件最適化を進めている。
作製した抗RAB11Aモノクローナル抗体を用いてマウス脳組織・初代培養神経細胞の免疫染色を行い、RAB11A発現分布を明らかにする。また、脳内インジェクションによりAAVベクターを投与することで疾患関連RAB11Aを強制発現させ、髄鞘化などの神経機能に及ぼす影響をin vivoで解析する予定である。
2022年7月~2023年4月に産休・育休を取得し、研究に従事する時間が短くなったため使用額が減少した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Human Mutation
巻: 2023 ページ: 8126544
10.1155/2023/8126544