2023年度の妊娠羊を用いた実験は、羊の種付けが秋から開始となるが、私が留学のため研究を中断したことに伴い、今年度の動物実験は0件であった。動物実験を再開する際は、昨年度の反省を生かし、子宮内感染を起こさないように今まで以上に気を付けることとする。具体的には、経皮的羊水穿刺前に、①母獣腹部の水による洗浄、②液体せっけんを用いた洗浄、③クロルヘキシジンまたはポビドンヨードでの洗浄・消毒、④70%エタノールでの消毒と4段階の工程を行うことを基本とする。また、モデル動物作成方法について、採取した母獣血液を加工したものを子宮内へ注入する行為を繰り返し施行してきたが、今後は血液の注入を持続的なものに変更可能か、検討する必要がある。 東北大学病院(当院)で経験したびまん性絨毛膜羊膜ヘモジデローシス(DCH)の症例が蓄積されてきた。DCH症例の臨床経過を考察するため、そしてDCHの病態をヒトの症例から検討するに当院におけるDCH症例の後ろ向きコホート研究を開始した。まず東北大学医学系研究科での倫理申請を完了した。現在過去3年分、流産症例2例、早産症例7症例の臨床データを確認した。早産症例のうち分娩週数の中央値[第1四部位数‐第3四部位数]は妊娠24週4日[妊娠23週4日-妊娠26週5日)であった。全例で絨毛膜下血腫を認めた。絨毛膜下血腫の増大、破水、羊水過少のいずれかを伴って、全例で分娩まで入院管理を9日~56日間要した。胎盤病理では全例でDCHを認めた。新生児の予後、酸化ストレス反応を確認する胎盤病理の精査について現在検討中である。
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