研究課題/領域番号 |
22K15915
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片山 紗乙莉 東北大学, 大学病院, 助教 (50812278)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 遺伝性血小板減少症 / EVI1 / AML / インテグリン |
研究実績の概要 |
3番染色体逆位・転座による予後不良の急性骨髄性白血病(AML)は、EVI1遺伝子が高発現となり、血小板・巨核球の増多を伴うという特徴を示す。一方で、EVI1遺伝子の機能欠失変異は遺伝性血小板減少症の原因として知られる。臨床検体を用いた遺伝性血小板減少症の原因遺伝子検索で新規の血小板減少症の原因遺伝子として遺伝子Aが候補にあがった。EVI1遺伝子高発現白血病において遺伝子Aの発現が上昇しているとの報告や遺伝子Aの発現が高いAMLは予後不良であるなどの報告があり、EVI1と遺伝子Aはともに血小板・巨核球造血とAML悪性化に重要な働きをしていると考えられる。遺伝子Aは、インテグリンシグナルや細胞骨格に関わるということが知られているが、血小板産生に関わる詳細な機能は不明であり、EVI1による遺伝子Aの発現制御および血小板造血における遺伝子Aの役割を明らかにすることが本研究の目的である。 今回同定した遺伝子Aの変異を有するモデルマウスを作製し、3ライン樹立した。1ラインは同定した変異に加えて目的の変異部位に近い部位の欠失も伴っていた。目的の変異のみを有する2ラインは血小板減少が認められ、患者の臨床症状を再現しており遺伝子Aの目的部位の変異が血小板減少の原因となると考えられた。一方で、目的変異の他に欠失も伴っているラインでは血小板数は正常であった。以上から、遺伝子Aの変異による血小板減少は単純な機能欠失によるものではないと考えられた。血小板減少が認められる2ラインでは血小板クリアランスの亢進が認められた。これまでにインテグリンαⅡbβ3の恒常的活性化により血小板クリアランスが亢進し血小板減少の原因となることが報告されており、遺伝子Aの変異により、インテグリンαⅡbβ3の恒常的活性化が起こり血小板減少の原因となっているとの仮説を立て研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同定した遺伝子Aの変異を有するモデルマウスを樹立し、同定した変異が血小板減少の原因となることを確認できた。樹立したモデルマウスでの血小板数の解析やインテグリン活性化の解析を優先して行なっており、EVI1遺伝子による制御に関しては研究が進められていない。
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今後の研究の推進方策 |
樹立した遺伝子AモデルマウスでのインテグリンαⅡbβ3の恒常的活性化が起きているかどうかを確認し、恒常的活性化がみられる場合はそのメカニズムについて解析を進める。加えて、EVI1遺伝子高発現のモデルマウスである3q21q26マウスとの交配を行い、白血病の表現型がどのように変化するか、白血病における遺伝子Aの機能について解析を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
機能解析のための遺伝子導入細胞の準備などを中心として行い、マウスの解析が十分に進まなかった。次年度はマウス解析を進め、細胞での機能解析と併せてEVI遺伝子と遺伝子Aによる巨核球・血小板造血メカニズム解明を進め、成果報告として学会発表、論文報告を行う。
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