研究課題
本研究テーマは新生児外科疾患患児の神経学的予後を腸内フローラの制御・管理により改善するという新たな視点からの研究である。新生児壊死性腸炎(NEC)をはじめとする新生児外科疾患は症例数が限られており、動物モデルによる検討は極めて重要であるが、NECモデル作成の実験手技は煩雑で、モデル確立に技術を要する。当グループですでに確立された動物モデルと蓄積されたデータから、腸内フローラの異常が神経学的発達に与える影響を解明することができる。また臨床においては過去30余年におよぶ豊富な新生児外科患児の治療経験とフォローデータも有している。臨床における問題点を基礎研究で解明することで、臨床応用を視野に入れた研究開発が可能な体制を構築している。現在までにNECモデル動物での研究に先行して、NECが発症した後の病態である短腸症候群+完全静脈栄養モデル動物を用いて、消化管ホルモンなどを用いた実験を行っている。HGFを投与することにより肝障害が抑制され、腸管順応が促進されることがわかっている。また腸内細菌叢の乱れが抑制されることもわかっている。これらの結果を踏まえて中枢神経への影響も検討したいと考えているが、組織学的評価においては短腸症候群+完全静脈栄養モデル動物の中枢神経に対する影響は認められていない。さらなる詳細な検討で効果が判明する可能性もあるが、まずはNECモデルに対する評価が必要と考えているため、動物モデルの作成を継続している。
3: やや遅れている
COVID19の蔓延に伴う移動の制限および動物実験施設の改修のため、NECモデル動物の作成にやや時間を要しているが、徐々に安定してきている。
NECOCOモデル動物の作成及び腸内細菌叢の検索を行う。出生直後は好気性の常在菌が定着し、その後、通常であればビフィズス菌などの嫌気性菌が優勢の細菌叢を形成するが、NECモデルマウスではCandida, Pseudomonasなどの好気性の病原菌が優勢となると考えられる。さらにNEC発症新生仔ラットのdysbiosisに対する改善効果およびNECモデルの生存率や重症度改善への寄与を評価する。
今年度はCOVID19の蔓延および当施設の動物実験施設の改修により予定通りの実験が進まなかった。次年度は今年度よりもさらにペースを上げての実験が可能と考えている。
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Journal of Pediatric Surgery
巻: 57 ページ: 1286~1292
10.1016/j.jpedsurg.2022.02.030